文化と芸術のコーナー(第5話)
本年の推奨映画「アイ・ラブ・フレンズ」
この映画は、京都市が一億円もの大金を助成して制作された、京都シネメセナ第2回作品である。主人公は、聴覚障害者の女性カメラマン、忍足亜希子。彼女がハンディキャップを乗り越え、周囲の人々との温かな交流の中で、懸命に生きていく姿を描いた涙有り、笑いありの感動の物語である。
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原作は、芝居好きのろう者と聴者が一緒に作った劇団「あしたの会」の戯曲で、「ずっと咲いてる」。監督は社会派でヒューマニズムの旗手、大澤 豊。京都は実は、日本の聴覚障害者教育発祥の地であり、多くの人々の苦労により、手話の普及、手話演劇など聴覚障害者の自主的な活動が盛んな所でもある。
ロケ地はもちろん京都市であるが、私の知人である小林写真館(中京区寺町通竹屋町)が、主人公が暮らす写真館となっていたのには全く驚いた。私は毎日そのお店の前を通って議会に通っているのである。小林さんによれば、撮影にかかった数ヶ月は終日50名近くのスタッフが陣取り、ほとんど商売にならなかったと言う。
その他にも右京区の造園会社や、三千院、五山送り火、鴨川、新京極、金閣寺や北野天満宮など、歴史と文化に彩られた市内随処が、撮影現場となっているほか、多くの京都市民がエキストラとして参加している。
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脇を固めるキャストには、荻原聖人、藤田朋子、田村高廣などが出演している。私は、京都市会の文教委員会の副委員長も務めているので、京都映画祭のオープニングセレモニーで、これらの俳優さん達とお会いできた。その中では、藤田朋子さんはテレビで見るよりもずっと輝いており、スター(星)とはなるほどその言葉どおりであると納得した次第である。 |
主演の忍足亜希子さんは、映画二作目ということでまだまだ素人っぽさが抜けてはいないのだが、しかしその心の美しさが顔ににじみ出ていた。当然耳も聞こえず、喋ることもできないので、今日に至るまでは大変な苦労があったと思うのだが、それを感じさせない不思議な魅力がある。我々の方が現世では宿業を積んでいるのではないかと、深く反省した次第である。これからどんどん頑張って欲しい女優さんだ。
私はハリウッド映画も好きだが、京都映画の、また日本映画の新たな文化として、本作品が口コミで全国・世界に評判になっていくことを願うものである。京都では11月23日まで「祇園会館」で上映中。多くの洋画を抑えて、私の本年一押しの映画なので、皆さんお誘いあわせの上、是非一度ご覧になって頂きたい。
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第5話終わり
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