文化と芸術のコーナー

文化と芸術のコーナー(第4話)

映画「パール・ハーバー」から


この夏も多忙でほとんど休みはとれなかったが、久しぶりに女房と2人で映画を観に行った。私は映画を観た後は、必ず映画評論を書いているので、今回はそれをご紹介する。しかし、私の独断と偏見に満ちているので参考にはならないかもしれない。

「パール・ハーバー」

若い男女のカップルや女性客で溢れていた。おそらく「タイタニック」のあの感動的なロマンスをもう一度という感じである。しかし我々のような中年夫婦は、歴史上の真珠湾攻撃を、アメリカ人がどのようにとらえているかに関心があった。

私の記憶では、戦争映画としては映画史上最も金をかけた作品だろう。現在の為替で約200億円くらいか。確かに、真珠湾攻撃のシーンは、SFXやVFXなどの特殊効果を用いているとは言え圧巻である。


しかし、この真珠湾攻撃に至る日米両国の背景や経緯については、十分に描き切れていないし、日本軍に対する理解はお粗末極まる。映画館に来ている若い人々には、日本ができるかぎり戦争を回避しようとしていたことや、アメリカのルーズベルトは逆に日本を戦争に引きずり込んで徹底的に叩きのめしたかったこと、また、事前に真珠湾攻撃を知っていてあえて先制攻撃させ、アメリカの世論を戦争に駆り立てていったことなどが伝わらないのである。

この映画では、日本がアメリカを騙して日米交渉をずるずると引き延ばし、卑怯にも宣戦布告の前にパール・ハーバーを不意打ちしたように描かれている。私としては極めて不満である。日本の若者のために、「トラ・トラ・トラ」をリバイバルして欲しいと願う。

それにしても、戦争は悲惨であり、史実はこの作品以上に残酷だ。実は、パール・ハーバーで日本の戦闘機によって撃沈された戦艦「アリゾナ」の中には、1千人以上の兵士が閉じ込められて水死したというシーンがある。昨年の年末には、アメリカの潜水艦によって、日本の「ゑひめ丸」が沈没し、若い人びとが未だに海の底に眠っている。真珠湾には日米の深い因縁が続いているとみるのは、私だけであろうか。

ラブロマンスとしては、偶然的に三角関係となり、ヒロインの心境としては複雑だ。観ている立場からは理解できないことはないが、オーソドックスに二人の恋愛として、それを裂こうとする戦争という設定のほうがわかりやすく感動的であったのではないだろうか。

日本的価値観からすれば、死んだと思った無二の親友レイフ(実は生きていた)の恋人イブリンと、ダニーがそんなに簡単にできてしまうことはありえないのではないか。私が古いのか。最後にはダニーが本当に戦死して、イブリンのお腹にはダニーの子が宿し、生き残ったレイフとイブリンが育てていくというのである。このあたりの自由な発想が、いかにもアメリカらしいのだが、ややこしいストーリが感動を減じているような気もする。

まずはご覧になって、考えて頂きたい。

第4話終わり



BACKNEXT