公明党についてのQ&A



公明党Q&A(その9)  自衛隊のイラク派遣問題について



 Q. 日本の自衛隊を必要とするほど、イラクの現状はひどいのでしょうか。



A.イラク戦争の前からイラクでは、子どもの8人に1人が5歳までに死亡しています。これがイラクの現実です。お産後の母親の死亡率も高い。これらの死因はほとんどが下痢や風邪などで、医療体制が整えば容易に救える命です。

A.「1984年に日本の支援で建設された『サマワ総合病院』(市民には日本の病院として親しまれている)があります。しかし全体的に老朽化し、多くの機材や器具が使用不能になっています。特にひどいのがトイレ。下水施設が故障し、漏れた汚水が床にたまっている状態で、強烈な悪臭が漂っています。そのほかボイラーや発電機、給水装置、空調設備なども壊れています。」(遠山参議院議員)
 イラク全体では、病院の5〜7割は十分な医療を提供できないと言われています。

A.上下水道も深刻です。「サマワでは、水の供給量は必要とされている量の40〜50%。フセイン政権が軍事を優先して、水道を整備しなかったのが理由。市の中心部では日に1時間しか水道が出ない地域もある。給水タンク車が週に数回回るが、間に合わず不足分は川の水をくむなど自衛手段でしのいでいる。川の水を飲み水として利用している家庭もある。上水道施設をつくる計画もあるが、完成までに3年はかかり、自衛隊に期待する声は強い。」

A.「サマワの北約30キロにある浄水場はムサンナ県で唯一飲料水を提供する水源。しかし夏は電力不足から給水ポンプが動かず給水活動が停滞する。」(読売新聞)
 イラク全土の発電所の約6割が稼動していないと言われています。 

A.「サマワと周辺地域では下水道設備が全く整備されていない。市街地の道路と歩道の間に白く濁った下水がたまる側溝がむきだしになっている。イラクの1〜3月は雨期。雨が降ると増水した側溝から下水が道路などにあふれ出す。家の中に流れこむ場合もある。下水道事務所のトラック8台で川まで運ばれるが、市全体まで手が回らない。汚水は市内を流れるユーフラテス川を汚している。」(読売新聞)

A.「もう1つの課題は道路事情。サマワの北にあるベイザ村には週に2回、給水車が訪れるが、強い雨が降れば道がぬかるみ、幹線道路から12キロが通行不能になる。村の責任者は『自衛隊が来てくれるのは本当にうれしい。給水の前に道路を舗装してほしい。水があっても運べない。』と訴えている。」(読売新聞)




 Q. 自衛隊は具体的にはどのような活動を行うのですか。



A.ひとつは、「給水・浄水活動」です。「宿営地に隣接する水路からくみあげた水を二重の有刺鉄線などで囲まれた宿営地内で、浄水セットを使ってろ過して飲料水を作る。給水能力は1日70〜80トンで約2万人分に相当。配水はサマワ市の給水車に対して行う。市民に飲料水を配るのは安全が確保できる時のみ。」(朝日新聞) サマワ市民は4万人なのでその半分の水が供給できます。

A.ふたつめは医療支援です。「サマワ病院など現地病院の医師への技術指導や助言が中心。医官や歯科医官を中心にX線撮影や臨床検査、歯科技工など各種の能力をもった自衛官も同行。街に出ての医療巡回は安全な場合のみ。」(朝日新聞)

A.三つ目は建設・修理作業です。ローラー車やブルドーザーなどを持ち込み、小学校の校舎の補修やグラウンドの整備、道路の補修や障害物を取り除く作業を行う。建設作業など宿営地の外での活動時には、武器を持つ警備班が同行し、周囲の警戒にあたる。」(朝日新聞)




 Q.事実上の戦闘状態にあるイラクへ自衛隊を派遣するのは、イラク特別措置法に違反するのではないでしょうか。



A.事実誤認です。イラク全土が危険であるという訳ではありません。自衛隊が派遣されるサマワは、イラクでも最も治安の良い安全な地域であると言われています。今までのところ、イラク戦争後テロは一件もありません。サマワはフセイン政権時代に抑圧されてきたイスラム教シーア派がほとんどで、スンニー派であったフセイン政権が崩壊したことを喜んでいます。ですからオランダ軍をはじめ連合国当局に対する反感は低いのです。




 Q.しかしサマワと言えども、自衛隊が派遣されればテロリストの標的になる恐れが高いのでないしょうか。



A.サマワでは、市外からアルカイダなどの外国人のテロリストが流入することを防ぐため、幹線道路沿いにチェックポイントが設けられ、不審人物について市民からオランダ軍に対して頻繁に情報提供がなされています。自衛隊もオランダ軍とこの情報を共有することになっています。また自衛隊をオランダ軍が守ることにもなっています。さらにサマワ市周辺は約24の部族が伝統的に治安の安定に寄与しています。強固な人間関係から不審な外国人などの情報も集まるのです。今回はこれらの部族が自衛隊を警護する計画が進められています。自衛隊の安全確保には二重三重の備えをしています。

A.「宿営地は約800b四方。周囲数キロが見渡せる場所に建設される。監視塔からの有人監視に加え、監視用カメラや赤外線センサーも使い夜間の安全も図る。出入り口付近はバリケードや遮断機を幾重にも設置し、金属探知機を使った検問も実施する。」(朝日新聞)



 Q.サマワ市民は自衛隊が来ることをどのように思っているのですか。



A.「サマワ市民の90%以上が自衛隊の派遣に賛成。反対は1.8%。日本の部隊とともに働きたいかとの質問には、74%がはいと答えている。」(朝日新聞)




 Q.サマワでは失業が多く治安の不安定要因となっていると聞くが、どのような対策を考えていますか。



A.日本政府はイラク復興に関して、総額50億ドル(約5,500億円)の支援を表明。うち15億ドル(1,650億円)は本年度分として無償資金協力となります。このうち約881万ドル(約9億35百万円)を学校の再建や住宅建設事業などに充てます。これにより1日あたり約2千人、サマワでは5〜6百人の雇用を創出します。




 Q. 「米英のイラク戦争では大量破壊兵器が見つかっておらず、これは間違った戦争だった。だから米英主導の復興に手を貸すこともすべきではない」との批判がありますが。



A.スプーン一杯で大量の殺傷能力をもつ化学兵器などは地中深く埋めれば、簡単に見つけることはできません。また明石元国連事務次長が、「かつてイラクで査察を行った際に、査察対象となっていたすぐ隣の工場で、秘密裏に大規模な核開発計画が進められていることを発見した。」と証言しています。さらに明石氏は「イランと国内のクルド人に対し、化学兵器を使用した前例がある。明らかに大量破壊兵器の脅威が存在した」とも述べているのです。従ってイラク戦争が間違っていたとは決して言えません。

A.しかも、イラク人に対する各種世論調査によると、肝心のイラク人の多くがフセイン政権打倒をもたらした戦争そのものについて、歓迎あるいは容認しているという結果が出ています。




 Q.民主党は「国連主導の復興でないから反対だ」と言っていますが。



A.昨年の8月19日にはバグダッドの国連現地本部事務所で爆弾テロが起こり、デメロ代表をはじめ多くの国連職員が亡くなりました。以後国連はイラクから職員を引き上げています。国連には独自の治安維持のための軍事力は全くありません。現実に今のイラクで国連が復興を主導することは不可能です。




 Q.「復興支援はすべきだが、自衛隊の派遣には反対」という意見がありますが。



A.イラクは現地の住民ですら、衣食住のほか、水、電気、医療なども不足している状況。これらを自ら調達するなど、自己完結的に動き、自分の身を守ることのできる自衛隊でなければ救援活動はできません。




 Q.民主党は「国連待機部隊を新たに創設して、イラク支援をやるべきだ」と言っていますが。



A.ごまかしそのもの。これは第二の自衛隊であり、看板を架け替えただけで中身は全く変わらない。民主党も本当は自衛隊を出したいのではないでしょうか。民主党の中には小沢一郎氏のような元自民党の方もいれば、横路氏のような元社会党の方もいるので、党内がバラバラでまとまらず、国連待機部隊などと問題のすり替えをしているのです。




 Q.それでも野党などは、自衛隊のイラク派遣は憲法違反と言っていますが。



A.お得意の捻じ曲げ、こじつけです。憲法の禁じているのはあくまでも、「国際紛争を解決する手段としての武力行使」であって、「人道復興支援」までが禁止されているのではありません。
 野党などは「現地でのテロなどがあった場合に、自衛隊が殺人を犯す可能性があるから違憲だ」とも言っていますが、憲法はそもそも自衛(自らの身を守るための正当防衛や緊急避難)行為までも禁止している訳ではありません。それは国内でも同じことです。このような言い方にだまされてはいけません。
 また「自衛隊が海外に派遣されること自体が違憲だ」という言い方もしていますが、憲法にはどこにもそんなことは書かれてありませんし、従来からも自衛隊が日本の外から一歩もでてはいけないなどという解釈はありません。

A.むしろ政府の憲法解釈上大事なことは、「日本は米軍などに守ってもらうことはできるが、たとえ米軍などが攻撃をうけても、日本の自衛隊は攻撃できない」としていることです。これを「集団的自衛権の行使はできない」と言います。この制約が大変重要で、野党がよく言う「米国の戦争に巻き込まれるとか、米国の戦争の手助けをする」などと言うのは、国民の無知に付け込んだ言い方です。




 Q.政府は万一自衛隊に被害が出た場合、どのように対処するつもりですか。



A.どれだけ警備をしていても、万一ということはあります。その状況が戦闘状態といえるような場合には自衛隊は撤収します。しかし、単発的な事件という場合には踏みとどまることになるでしょう。




 Q.公明党の対応を教えてください。



A.公明党は極めて重要な課題であると捉え、神崎代表をはじめ計4回、6人の国会議員がイラクの現地調査を行いました。批判ばかりしている民主党や共産党の党首は一度も現地を見ていません。たとえ短時間でもイラクに行くのと行かないとでは雲泥の差があります。党首たるもの自分の目で本当に危険かどうか確かめるべきです。

A.公明党としては、「自衛隊のイラク派遣には賛成しつつも、陸上自衛隊の派遣時期について慎重を期すよう」との立場を主張して参りました。そのためこれまでも自衛隊の派遣はかなり先送りされてきました。小泉首相とも覚書を交わし、首相が現地の治安状況を十分に見極めることや与党と緊密に協議することを取り決めています。今後先遣隊の報告を待って、施設部隊、本隊の派遣を慎重に検討していくことになります。




 Q.改めて自衛隊のイラク派遣賛成の理由を整理してください。



A.目的はあくまでも「人道復興支援」だということです。「武力行使」にゆくのではありません。なぜ困っている人がいて、イラクの多くの人が来て欲しいと言っているのに助けに行かないのか。日本の自衛隊はすでにPKO活動で、カンボジアや東チモールへも行っていますし、アフガニスタンへも後方支援として協力しています。具体的な活動内容はすでに述べたとおりです。

A.今回の派遣は、国際社会全体の総意にもとづくものであるということです。イラク戦争直後の昨年5月に、国連安保理はイラク人道復興支援を加盟国に呼びかける決議、1483を全会一致で採決しています。これには当初イラク戦争に反対していたフランスやドイツも賛成しています。すでに37カ国が部隊を派遣しています。

A.逆にもしも日本が自衛隊を派遣しないという決定をしたならば、米国をはじめこれらの国々に大きな動揺を与えることは必至です。イタリアやスペインなど被害者が出ても何とか踏みとどまっている国から続々と撤退する可能性は高く、最終的には米国も撤退を余儀なくされ、結果イラク復興ができないことになってしまいます。これではアルカイダなどテロリストの思う壷。イラクは再びテロの巣窟となり、米国に協力してきたイラク人などは大量虐殺される恐れもあると指摘されています。それほど国際社会における日本の地位は重いということです。

A.もはや日本だけが、世界のこのような大問題に対して、いわば小切手を切ってお金だけで済ませるという態度は、国際社会では通用しない時代になっています。日本だけが平和であれば、世界の平和が構築できるのではありません。世界のために少しずつでも日本として貢献できることは行う必要があります。そのことにより日本の平和も保たれると考えています。もちろん何でもやれば良いということではなく、憲法の制約の中でできることをやるということです。


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