政治の焦点

政治の焦点(第14話)

経済政策を考える(その3)


前回指摘した長期不況の世界的・構造的要因や、その結果としてデフレの進行という新しい事態を克服するためには、次のような改革と対策が必要になってきます。すなわち、

(1)中国などの追い上げに対抗するには、技術・アイデア・芸術性の点で日本製品の高付加価値化を進めることです。政府においては、科学技術創造立国を掲げ、バイオ・ナノテクノロジー・環境・情報通信の四分野への重点投資を進めていますし、大学と産業界、官界との融合にも力を入れています。
(2)世界に遅れをとったIT(情報)化を挽回するために、官民あげて高速・大容量・低価格の情報基盤の整備に取り組むこと。

(3)銀行の自助努力もしくは、公的資金によって自己資本を増強し、銀行システムの健全化を図ること。これによって資金を銀行から産業界へ還流すること。

(4)不良債権処理を進めると同時に、産業の再生にも取り組むことです。政府では産業再生機構を設立してこれに重点的に取り組もうとしています。

(5)硬直化した公共事業計画の見直しや、特殊法人の民営化などによって、政府部門を国民の真のニーズに的確に応えられるようなものに改革していくこと。

(6)明治以降、戦後も一貫して続いてきた強固な中央集権体制を、抜本的な地方分権体制へと転換し、権限だけではなく税源の大幅な移譲を実現すること。これにより、環境や文化を大切にする地域社会の実現や少子・高齢化への対応を進めるなど、地域に即した潜在的需要を開花させ、新しい技術との出会いを通して消費や投資を生み出すことが極めて重要です。

(7)現在のデフレの理由は、世界経済の新しい波や、情報化、少子高齢化、文明の転換などに対して、日本の社会経済システムが前時代の構造のままであり、変化に対応できていないことによるものです。その結果、国民の多くが将来に対して弱気になり、お金をたんす預金などの形で現金を保蔵し、物やサービスに支出しないのです。従って抜本的には構造改革を成し遂げ、将来に対する安心感や期待感を醸成して、新しい需要を生み出すことが必要なのですが、しかし構造改革を成功させるためには、金融緩和策や円安誘導策を通じて、国民のデフレ予想を解消することも一定効果があると考えます。
と。


つづく

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