政治の焦点(第6話) リストラと闘う男たち 出口の見えない経済
システムエンジニアの中森勇人さんは、次のように書いている。「突然の退職勧奨に呆然とするばかりでした。…それを救ってくれたのは妻と労働条件相談センターの相談員です。この二人に勇気づけられるように、…上司を前に『私は絶対に辞めません』と辞めない宣言をしたのです。」 会社からの条件提示に対しても、辞めない宣言を文書で解答。その後は何と三ヵ月間もリストラ部屋に入れられることになる。「これでも辞めないのかと迫る。…自分から辞める気になるように仕向ける、イジメにも似た嫌がらせをしたのです。」 「つらいかもしれないが、今辞めると再就職は難しいし、収入も四割方落ちることになる。…その言葉どおりの現実を体験した時、『辞めたらアカン』と自分に言い聞かせたのでした。」「リストラ部屋にいることが他の社員への見せしめになっていることもあり、私の中にメラメラと闘志が湧いてきました。『こうなったら何が何でも辞めないぞ』と決意を新たにしたのです。」 会社が最後に突きつけてきた条件提示に対しても、「弁護士の勧めた『内容証明郵便』を社長に送ることで、…会社はとうとう私を辞めさせることを諦めたのでした。」 「何も脱サラして自分の店や会社を経営するだけが自立ではない…この大リストラ時代、サラリーマンとしての地位を生かしつつ、自立していくことを考えるのが得策でしょう。…そのためには『会社』を辞めずに『会社人間』をやめること、まずは心の脱サラから始めてみませんか。」と述べている。 これからの雇用政策 退職には自己都合退職と会社都合退職とがあるが、これからは中森さんのように自己都合退職勧奨が増えるであろう。これに対抗するには、組合や弁護士に依存するのではなく、絶対に辞めないという決意と闘いしかないのである。 会社都合退職すなわち解雇には、解雇の四条件をクリアしなければならない。それは@人員削減の必要性がある、A出向、配転などの解雇を回避するための努力がされている、B解雇対象の人員選定が客観的、合理的、C労働者、労組との協議、手続きが十分になされている、との判断基準である。 現在一部には、これらの解雇規制を緩和しようとの動きもあるが、私は絶対緩和してはいけないと考える。労働基準法などの法令を必ず守らせなければならない。「小泉総理の"痛み"発言をまるでお墨付きをもらったかのごとく、社員のクビを切ってもいいんだと考える中小企業の経営者が増えて」いるという(前述中央公論)。このような便乗リストラは断じて許すわけにはいかない。 さて、中森さんの場合はまだ会社が存続していたので、何とか自己努力によって助かったが、会社が倒産した場合はもっと悲惨な事態に陥る。この場合は、失業給付の支給とハローワークによる職業紹介となる。政府では、すでに職業訓練教育の充実や企業の雇用促進策など、様様な方策を講じている。 しかし今後さらに失業が増大する場合には、財源が無いので危機的な状況を迎える。特に米国のテロ問題の解決が容易ではないことを考えると、その時には非常事態として国債発行枠30兆円にこだわらず、大胆に雇用創出事業を展開する必要がある。 以上 |