政治の焦点

政治の焦点(その5)

参議院選挙を終えて

正直な政治が勝つ

今回の選挙戦は小泉ブームによって自民党が圧勝したが、しかし当選した自民党議員のひとり一人が小泉総理の改革を本当に理解し、支持しているとはとても思われない。道路特定財源や地方交付税、また特殊法人をめぐる改革にあたっては、族議員との戦いの中で党分裂の危機もはらんでいる。

この夏、京都市会自民党では長老派と若手との溝が深まり、いよいよ会派が二つに分かれることになった。一地方の話であるが、全国的に波及する恐れもある。政界の守旧派と改革派との戦いがはじまりそうだ。これは自民党に限らず、どの政党にもあてはまるかもしれない。

それにしてもなぜ小泉氏なのか。私は彼がこれまでの政治家とは違って、正直さの故に国民の信頼が集まっているように思える。日本の構造改革は必要だし、それに伴い痛みが出てくることも国民はわかっている。それを例えば、日本共産党のように消費税を3%に引下げますと公約しても、これはどう見てもウソをついているとしか思えない。そんなことくらいで経済は良くならないし、どうも票目当てだと国民は見抜いている。

21世紀の日本政治は、「これをやるかわりに、あれを辛抱してもらう」というように、国民を説得しなければならない時代に入った。場合により、「国民全員に我慢してもらう」ことを正直に言わなければならない。

構造改革の目的

現在日本の行き詰まりの原因は、戦後日本を支えてきたシステムややり方が通用しなくなっているからだ。だからここは頭を切り換えて、新時代に即応した方法をあらゆる面で創造していくことが必要だ。あらゆる既成概念をとりはらって、日本人ひとり一人が持っている、才能や知恵などこれまで眠っていた力を蘇らせることだ。それはハイテクなどの高度な科学技術に限られるものではなく、老若男女の潜在能力を発揮させることにある。

そのために聖域無き構造改革が求められている。本当の意味での「自由」と「民主主義」の追求である。それは多様化、個性化であり、同質性や没個性とは決別しなければならない。


公明党のめざすべき構造改革

選挙中わが党の神崎代表は、「人に優しい構造改革」を叫んでいた。それは小泉総理の構造改革を前提とした上で、雇用対策など痛みを和らげる主張であり、評価されるべきものだ。さらに私は、今後公明党のめざすべき構造改革について、小泉総理とは別の角度から独自の提言を述べてみたい。

ひとつは、「価値観の構造改革」ともいうべきもので、戦後日本人が理想としてきた「アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ」(アメリカ型の生活様式)から、日本の自然環境や文化芸術を大切にする生活スタイルへの転換である。経済成長や物質的豊かさ最優先の生き方から、経済成長はゼロであっても豊かさを感じられるような社会をめざすべきではないだろうか。地球温暖化防止条約・京都議定書の批准はその転換点を意味しているのであり、だからアメリカが反対しているのだ。

二つ目は、「外交の構造改革」だ。これまでの日米同盟を基軸としながらも、中国・韓国をはじめアジア諸国との信頼を確立する外交政策の強化である。今、ブッシュ政権の新冷戦構造とも言うべき世界戦略に呼応して、日本の中にも国家主義と国防国家を目論む勢力が台頭しつつある。公明党は自民党の中のこのような勢力を抑え込んでいかねばならない。公明党が与党の中にあることは、アジア諸国との信頼構築のためには大きな意味を有していると言える。

三つ目は「地方分権型国家の創設」である。これは明治以来の中央集権型国家から、中央政府には外交・防衛・経済などの限定された権限だけを残し、あとはすべて地方政府に分権するものである。課税権は地方に与え、国からの地方交付税などは廃止する。首都も東京から移転し、地方発の創造力溢れる個性的で多様な国土づくりをめざすものである。

この他にもいろいろあるが、今回はこの程度にとどめておきたい。

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