21世紀の政治理念とは何か(その4)

真の個人主義の時代

21世紀は情報革命の進展によって、「個人」の存在が一段と大きくなるでしょう。ある意味で「組織から個人の時代へ」と言い表すこともできます。20世紀の日本社会は、組織の力が大変強い時代であったと言うことができるでしょう。また組織力と経済力も結びつくことが多くありました。「組織」になぜ力があったかというとそれはあらゆる情報が「組織」に集まるからです。なおかつ組織内の上位者ほど多くの情報をもち、下位の者に対して有利でありました。

ところが、IT革命は個人がその気になれば相当の情報を集められる時代を創出したのです。力の源泉がこれまでの「組織」から、「個人」へとシフトしつつあります。 この故に社会革命であるとも言われています。ですからこれからは、大会社や国・地方の官庁に所属しているということよりも、個人の創造力が問われる時代となっていくでしょう。 その意味で私は、真の意味での個人主義の時代が到来すると思うのです。

個人の運命を切り開くものは、その個人であって国家ではない。又組織でもない。そのような意味で私は個人主義という言葉を使っています。それは国家主義と対置されるべきものです。戦前の国家主義は言うまでも無く、戦後でも会社主義とでもいうような、自らの運命を組織に預けてしまっている組織主義がありました。いやそれに近いことは未だにあると思います。

しかし、21世紀を迎える今日、自分の運命もそして社会をも変えることができるのは、自分しかないということを再認識すべきです。それは他律ではなく、自律であるともいえます。真の個人主義を確立することが、21世紀の政治の任務です。


「公」が問われる時代

21世紀は真の意味での個人主義が大切にされる時代でありますが、同時にそのような自律した個人がどのように社会を形成していくか、真の意味での「公」が問われる時代でもあります。もちろん「公」とは国家でも地方政府でもありません。定義の仕方が難しいのですが、「一人一人の個人が作り上げ、守っていくべき社会共通の利益」ということもできます。

政治とは、「個人」の自由な活動を最大限保証する一方で、「公」を守らなければならない。また「個人」と「公」の矛盾を調整する役割があると言えます。私は21世紀の政治理念として、自由、民主主義とともに、「公」を「明」らかにしていくことが大変重要であると考えています。平和という理念もそうですし、環境、教育、年金・保険・福祉、また地域コミュニティにおける様様な公益もその中に含まれるでしょう。さらに人間社会のあらゆる分野の「公」が問われなければなりません。
そしてその「公」を担う主体は、 これからは政府や自治体よりもむしろ国民一人一人に焦点があたります。一人一人が責任をもって考え、参加し、「公」を作り上げていくスタイルに変えていくことが政治の役割になります。従来のように政府や自治体が「公」であって、その「公」から「個人」へ利益誘導することが政治の役割ではないのです。

私は、自由と民主主義を前提としながらも、21世紀の新しい政治理念とは「公明」であると思うのです。それは、自律した「個人」によって支えられる、新しい「公」の理念です。国家権力や組織を背景とした「公」ではないのです。その理念は、上から押し付ける理念内容ではなく、国民大衆が下から作り上げていくことに重要な意味があるのです。その過程こそが新しい「公」であると考えています。


次号に続く

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