文化と芸術のコーナー

第1話 池波正太郎著「映画を観ると得をする」

なぜ「映画と小説」なのか

このコーナーは、私のサイトを見て頂いた方に、少しでも参考になる情報を提供できたらという思いで、今回から新しく設けたものです。 私の趣味のひとつが「映画と小説」です。映画と小説は、人生に感動を与えると同時に、自分以外の様々な人間模様を通して、われわれに生き方のヒントを教えてくれるからです。

池波正太郎 「映画を観ると得をする」

特に映画については、邦画も良いのですが、洋画が外国人のものの考え方や、世界の諸事情を知る上で大変有益です。 私の好きな作家のひとりである、故「池波正太郎」先生は、その著書「映画を観ると得をする」の中で次のように述べておられます。

「(映画は)観れば観るほど、やはり違いますよ。人間が灰汁ぬけてくる。…娯楽でありながら人生について教えられることがある。感覚的にも洗練されてくる。…粋な人間になって行くんです。着ているものがどうとかいうことではなくてね。人間の『質』が違ってくる。

…いろいろな人生を垣間見て、いろいろと人間のことがわかってくるでしょう。自然にさまざまな物事に対する理解力が育ってくるし、批評精神も強くなってくる。神経のまわりかたがよくなってくるということで、だんだん灰汁ぬけた人間になる。」

さすがに「鬼平犯科帳」の生粋の江戸っ子、池波先生です。最近ではほとんど聞かなくなった切れ味鋭いお説教です。そして、さらに痛烈なご指導をわれわれ政治家に対して頂いているのです。

「ぼくは、政治家に『総理大臣官邸で一週間に一回、映画をやりなさい』と言いたいのだ 。
…何故そういうことを勧めるかというと、映画の試写会に政治家が招かれることがある。一番行儀悪いのが政治家ですよ。…どうも映画の試写会でぼくが会う政治家
はひどいね。
…時間に遅れて来て映画が始まっているのに、人の前を頭も下げずに通る。足を踏んづけても知らんぷり。例えば、名前はいわないが、婦人運動の先駆者なんていわれている野党の婆さん議員なんか映写がはじまってから入ってくる。

…いよいよ映画が始まるや否や、いきなり前へ乗り出して、頬杖ついて、煎餅食うやつがいるんだよ。これが政治家なんだよ。だれでも名前をいえばすぐわかる与党の政治家でしたよ。夫人と二人でね。まんじゅうだの煎餅だのを持込んで、のり出して食べている。
…社会を指導しなければならない立場の人が社会の中に入ると社会のルールを守らないんだから。もちろん全部の政治家じゃありませんよ。そういうひどいのが多いということです。…」

名前は言わないが、とおっしゃっておられるが、これはどう見ても名前は明らかですね。ここまで斬られると言い訳のしようもありませんが、私は、社会のエチケット
を守りながら、同時に人間修行の場として、これはと思う作品については時々映画館に足を運ぶようにしています。安上がりの娯楽ですが、実に人間を成長させてくれます。


政治家は、もちろん選挙区を歩き回らなければなりませんが、それだけでは足りない。自分と会えない、話をすることのできないサイレントな意見を感じ取ったり、多角的なものの見方ができなければならないからです。想像力も膨らませなければなりません。

また、政治家は「どぶ板踏みと中央からどれだけお金を取ってくるかだ」と言う人もありますが、それだけでは実に小さなつまらない政治家しかできません。この時代の変革期に当たっては、人々のニーズを汲み取ると同時に、どのような社会を創っていくのかについての、大きな構想力(ビジョン)が求められています。そしてその着想力は日常の仕事以外の、例えばお芝居や映画、また小説などの中にヒントが隠されていることが多いのです。

私は、映画を観る時は早めにいって必ずパンフレットを読み、帰ったら「私の映画記録」を書くようにしています。これはいい財産になっています。

みなさんも是非、池波先生の「映画を観ると得をする」をご一

読されることをお勧めします。映画に対する考え方が一変するでしょう。また 企画的な仕事に携わっておられる方々は、パチンコやマージャン、酒なども良いが、映画の効用を見直されてはいかがでしょうか。

第1話はこれくらいにさせていただいて、これから順次、私の推奨する小説やお芝居、映画についてエッセー風に書いていきたいと思います。

第1話終わり

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