平成16年 5月京都市会代表質問


新たな行財政システムの構築と戦略的な市政推進

(要望)
京都市では、政策推進と市政改革、財政健全化を連動させ、一体的・戦略的に推進することを狙いとする「新・京都市都市経営戦略会議」を既に設置されましたが、わが党では昨年来その具体的取組として「市政改革実行プラン」「財政健全化プラン」の早期の策定を強く主張して参りました。

これらはこの 6 月にも基本方針が策定されるとのことですが、まず「財政健全化プラン」については、巨額の財源不測解消が第一の目標となるしょうし、加えて新たな市民ニーズに応え、元気な京都市を実現していくためには、財政の弾力性を回復させるという視点も不可欠であると考えます。また市債残高は一般会計だけでも1兆円を超えていますが、市民の不安に答えるためにも、何らかの指針の策定が必要であると思われます。

新たな「市政改革実行プラン」では、特に民間活力の導入、外郭団体の再整備等に力点を置くと述べられていますが、大事なことはその具体的な中身であり、スピードであります。そこで今回は外郭団体の具体的、個別の問題について指摘するとともに提言をしてみたいと存じます。


住宅供給公社の「特定優良賃貸住宅制度」の改革

(問題点)
近年空家戸数が増大し住宅供給公社の経営を圧迫しています。京都市の調査によると、平成 12 年度には 148 戸(空家率 6.68 %)でしたが、 13 年度は 235 戸 (9.59 % ) となっており、 14 年度は 351 戸( 13.39% )、 15 年度には 479 戸 (17.56%) と増加の一途であります。同公社は大半の民間オーナーと常に満室を保証する借り上げ方式をとってきたため、空家が増えれば増えるほど空家の賃料負担を強いられることになります。このため 12 年度の公社負担額は 165 百万円であったのが、 14 年度は 373 百万円となり、さらに 15 年度は概算では何と約 600 百万円まで膨れ上がると推定されています。

空家が増大する理由は、私の調査では主に次の三つにあると考えます。第 1 は、地域によって契約家賃が民間よりもかなり割高になっていることです。特に伏見区、西京区、山科区は顕著であり、結果としても空家率が高くなっています。

第 2 は、毎年 3.5 %の割合で入居者負担が増えることです。入居後数年経過すれば、民間住宅よりも割高になっていくことは当然です。京都市内のファミリータイプの賃貸マンションの供給過剰、分譲ファミリーマンションの販売価格の低下などにより、民間賃貸マンションの空室率が 10 %を超えています。このような経済情勢を反映して、民間では賃料価格は毎年 3 %近い下落、礼金無し、更新料無しという様々な対応策による募集向上を行っているのが実情です。当初は有利な賃貸条件であったとしても、「特優賃」に住み替えることができないのであれば、民間賃貸物件に移動せざるを得ず、空家は増加していきます。 第三は、顧客サービスや広告の問題です。たとえば民間であれば市内に多くの店舗を有して、物件の案内までして顧客の利便を図っているのに対して、特優賃は公社に来なければ物件の検索や契約手続きができませんし、物件も自分で見に行かなければなりません。また定休日は民間がほとんど無休もしくは平日に1日となっているのに対して、公社は土曜・日曜が営業となったのはようやく本年1月からであり、祝日は休業されています。平日の営業時間も午後 5 時までであり民間と差があります。またホームページでも民間の物件は条件・写真・図面までついているのに、公社のホームページでは詳細が検索できません。さらに民間のような店頭看板での広告もありません。これでは空家が増えるのは当然です。

(質問・提言 1 )
平成 14 年度の同公社の特定準備金計上前の利益は、 239 百万円の赤字であり、今後も特優賃のこのような空家増加を放置すれば、早晩公社の経営を揺るがすことは必至です。空家対策はもはや一刻の猶予もならないところまで来ています。

そこで、物件のオーナーとの契約第 12 条に従い、周辺の環境変化、築年数、競合物件等に照らし現状に適した基準賃料の見直しを行い、入居者負担分を含めた価格改定を強力に進めるべきです。

もう1つは民間の力を活用することです。すなわち募集や管理などの業務を民間に委託することが必要です。この点に関し注意すべきは、京都市では一般競争入札が原則的方法とされていますが、同公社ではすべてが随意契約で行われ、また随意契約についても見積り合せが行われたものもほとんどないという事実であります。空家対策には、公正な競争入札の導入により、経費節減を図るとともに、市内の各地域において民間活力を導入することが不可欠です。またこれは余剰人員を削減するなど公社全体の改革にもつながるものと考えます。ご答弁を頂きたい。


住宅サービス公社の改革

( 問題点 )
京都市住宅サービス公社は、主に市営住宅の維持管理事業を受託している財団法人です。平成 15 年度予算では 30 億円以上の委託料、および補助金として約 3 億円が京都市から住宅サービス公社に支払われています。しかしながら平成 15 年度の包括外部監査報告では大要次のように指摘されています。

  1. 設計金額1件 200 万円を超える工事ついて、指名競争入札を行わずに、同公社から推薦された業者による見積もり合わせにより業者を決定しており、特別の事情がある場合には、特命随意契約となっていた。この結果、競争の効果がほとんどみられない。
  2. また1つの工事が不合理に分割され、同公社で随意契約が可能となる1件 200 万円以下の複数工事とされていた。同時期、同地域、同内容で行われる工事については、すべて1つの契約としてまとめる必要がある。平成 15 年度に指名競争入札規則の整備は行われたが、工事を不合理に分割して小規模工事として取り扱う手段を閉ざさないかぎり有効な見直しとはいえない。
  3. 200 万円以下の修繕工事についての業者の選定は、随意契約で行われており見積書はとるものの競合先が存在しないため、委託金額が業者主導に陥っており、実際の工事金額が概算金額の 1.2 倍を超えているケースもあった。同公社で修繕工事の標準単価表を作成するなどの方法で、業者に余分な請求をさせないような仕組みを作る必要がある。
  4. 京都市から同公社への委託契約書には、清算報告書並びに証拠書類の提出が要求されているにもかかわらず、平成13・14年度ともに証拠書類の提出がなされていない。清算時には京都市は委託契約の履行状況を把握すべきであり、必要に応じて同公社からそれを証する書類を徴して、その内容を確認すべきである。
  5. さらに有料駐車場の管理についても、京都市は住宅サービス公社へ費用管理を大幅に超える委託料を支出しているので、委託料の算定に当たっては、より正確な見積もり計算が必要である。また駐車場の事業費用と市営住宅の管理費用の削減に取組むべきである。
等であります。

( 質問 2)
これらは誠に厳しくかつ重要な報告です。年間 30 億円以上の委託料は外郭団体の中でもトップの金額であり、財政の非常事態にあって、業務効率が悪くしかも甘い管理が放置されていることは由々しき問題です。仮に 10% の効率化が進めば 3 億円の経費削減になるわけです。私が取り上げた点以外にも監査報告で指摘された事項について早急に改革すべきであると考えます。ご答弁下さい。

中小企業支援のための「コーディネーター」の創設

( 現状と課題 )
京都市はこれまでベンチャー企業育成については、メキキ委員会をはじめ先進的な取り組みをして来られました。また最近では「あんしん借換融資制度」や私どもが提言した「小規模企業おうえん融資制度」など中小企業融資の面でも画期的な成果を挙げています。確かに、京都の中小企業はものづくりの技術に関しては相当の水準にあると思われますが、しかし他方で、その高い技術力を営業に活かし会社を成長させていく力が弱いとの指摘は認めざるを得ません。従ってこれからの行政の課題は、既存の中小企業のマーケティングや新たな販路開拓の支援、技術とニーズのマッチングなどを通して、中小企業の活性化を促進していくことにあります。

( 事例研究 )
注目すべきは大阪市の大阪産業創造館で実施している「ビジネスチャンス倍増プロジェクト」です。これは、ものづくりの技術が高いなど企業としてのセールスポイントを持っている大阪市内の中小企業と、全国の需要先を結びつけることにより、ビジネスを拡大していこうという野心的なプロジェクトです。その特徴は、大企業退職者で技術に明るく、かつ市場や経営のわかる人をコーディネーター(仲介人)として採用していることです。同館のホームページでは「コーディネーター」の名前・写真・略歴が 50 名以上も紹介されていますが、彼等が事前に選定した市内の中小企業約 2,000 社に訪問する中で、ビジネスチャンスをひとつひとつ拾い上げビジネスに結びつけています。このプロジェクトは 2002 年2月に開始されたばかりですが、 2004 年 3 月までの訪問企業数は 1,295 件、ビジネス成約数は 334 件に達しており、推定の契約金額は約 20 億円弱となっています。彼等コーディネーターの年間予算は、人件費を含めてわずか 50 百万円です。まだまだ可能性は大きく膨らんでいますし、さらに従来の下請け構造が崩壊していくなかで、大企業との新たな連携や中小企業同士の横請けのネットワークも拡大しています。

(質問・提案 3 )
京都市でも中小企業支援センターが中心となり、「中小企業活性化サポートチーム」として独自の「コーディネーター」を組織化してはどうでしょうか。彼らが事前調査に基づき、積極的に企業訪問する中で、技術力をはじめ付加価値のある中小企業と全国・世界の需要家を結び付けるなどの成果が生み出されていくものと思われます。従来のように中小企業の方が経営相談に来るのを待っているだけでは駄目です。「コーディネーター」は、全国や世界にも人脈のある銀行や大企業の退職者のほか、デザイナーのように伝統産業の新たな需要創出も手掛けられる人材を揃えることが必要です。同センターでは従来の直貸しや融資斡旋業務を廃止しましたので、この際組織や業務の抜本改革を図ることにより、予算を捻出できるはずです。このような観点から「ますもとマニフェスト」にある「第二創業 100 社」「外資系企業を含めた 2,000 社の企業訪問」「高度集積地区に 50 社の企業誘致」のなどの目標達成を検討されてはどうでしょうか。これらの目標もコーディネーターのもたらす情報連携の中から結果が生まれてくるものと思われます。ご見解を賜りたい。

桃陽養護学校への高等部の創設

(質問 4 )
京都市では病弱な児童生徒のために、隣接する京都市立桃陽病院で入院しながら学べる桃陽総合養護学校があります。この養護学校では、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、肥満、糖尿病、腎炎、心身症など様々な病を持ち、医療支援や生活支援が必要な児童生徒を受け入れています。このたびの養護教育の抜本改革により、総合性・地域性の養護学校に再編され、また鳴滝総合養護学校、白河総合養護学校では高等部において職業学科が創設されたことは、大いに喜ばしいことです。しかし最後に残された課題が、病弱児童の高校進学の問題です。

保護者の皆さんからは、知的障害や肢体不自由などの障害を持つお子さんたちには、それぞれの養護学校があり、ほぼ100%の高等部進学が保障されているにもかかわらず、病弱児に対する高等部がない現状は理解しがたいとの訴えがあります。

私は独自で、病弱養護学校中等部を卒業した生徒の状況に関し、調査を致しました。いくつかの事例を紹介したいと思います。

まず、アトピー、喘息、自律神経失調症、そして睡眠障害を患っていた中学部生徒の場合。公立の全日制高校に進学したものの、入学当初から発作や体調不良を繰り返し、通学することができなくなりました。その後、2〜3の大学病院などの入院治療を経て、病状は徐々に改善したものの、高等学校の学習については、遅々として進まず空白状態が続いています。中等部時代は、京都市立桃陽病院で入院治療を受けつつ、隣接する養護学校で勉強することができていた経過を考慮すると、高校進学後も、喘息や発作などの病気に対してサポートする施設・制度があれば、状況はもっと改善されていたと思われます。

次に、心臓疾患、内臓疾患などの障害をもっていた生徒の場合は、数年間の入院治療を経て、中等部を卒業。一般の高校への進学は困難な状況であったため、民間の塾に2年間、週何日か通いながらパソコンへの興味を深めました。その後も、体力と知力不足から高校への進学は難しかったのですが、現在では、なんとか通信制の学校に入学し、マイペースでの単位取得を模索しています。

さらに、喘息発作・対人恐怖を患っていた中学部の生徒の場合には、中学部を卒業したものの、高校に進学することができず家庭内で療養生活を送っています。

また、対人恐怖、不安神経症を患っていた生徒の場合も、桃陽病院に入院するものの、病状がひどくなり、養護学校を退学。高等学校に通う年齢になり、民間のフリースクールに一時在籍。その後、通信制の高等学校に入学するが、人間関係に耐えきれず、家庭内で療養生活を送っていると伺っています。

このように病弱児童・生徒の中学卒業後の現実は誠に厳しいものがあります。高等部を設置している病弱養護学校は、既に全国で50に上り、設置していない都道府県は東京、山梨、愛媛、佐賀と伺っております。確かに京都の鳴滝総合養護学校には高等部が設置されていますが、対象は筋ジストロフィとてんかんを患っている子どもたちのみです。

以上の点を踏まえ、まず目前に高校進学を控えた中学生への個別のきめ細かな対応を求めるとともに、京都市においても桃陽養護学校への高等部設置の検討を早急に開始していただきたいと思います。誠意あるご答弁を求めます。

BACKHOME