議会報告

「京都民医連中央病院の検査虚偽報告及び不正請求に関する徹底究明を求める決議」について賛成討論

『「命」なんと考えている』9月29日付、読売新聞朝刊の見出しであります。まさか厚生労働省認定の臨床研修指定病院である、同中央病院でこのような不祥事が行われていたということは信じられないことであり、絶対に許すことのできない言語道断の所業であります。

多くのまじめな医療機関に対する市民の信頼を根底から裏切るものであり、断じてあるまじき非道の行為であります。

今回、新聞等で報道された内容は、1998年から4年もの長きにわたり、細菌検査を担当する検査技師が、肺炎患者などの細菌培養検査を実施していないにもかかわらず、「検査した」「細菌は検出されなかった」との手抜き検査の虚偽報告をし、診療報酬を不正に請求しながら、患者にも医療費を請求していたということであります。

さらに重大なことは、虚偽報告にかかわる89人の患者が死亡しているという事実であります。

今回事件を起こした京都民医連中央病院については、昨年5月に、同病院の病院食を食べた患者が下痢、発熱を起こす食中毒事件が発生しました。最終的に16人の患者からサルモネラ菌が検出され関係当局から厳しい指導を受けていたのであります。

また入院患者の食事を作る栄養課職員の寄生虫検査も、95年から実施していないにもかかわらず、「寄生虫卵を認めず」と虚偽の報告をしていた不祥事など、医療機関として最低限のモラルさえも、まったく守られていなかったことが判明しております。

このような過去の度重なる事件・不祥事をなんら反省することなく、また教訓として活かされることなしに、またしても今回の事件が発覚したことは、同中央病院自体が掲げる「いのちと健康を大切にする病院・診療所」との理念が、全くの偽りであったことを物語るものであります。

さらに以上のことから今回の事件は、病院ぐるみ、組織ぐるみの隠蔽助長体質の中で起こったものであるとの疑念を強く抱かざるを得ません。

この件については京都市として、不正に請求された市民の税金については明確に返還を求めるとともに、京都府との連係の中で強力な指導・処分をはじめとする厳格な対応を取るべきであります。

あわせて虚偽報告に関わる89人の死亡について、「死亡患者と手抜き検査の因果関係は無かった」とする病院側の説明についても、本田武司大阪大学微生物病研究所教授は、「細菌の種類によって、投与すべき抗生物質の種類も決まる。細菌検査の判定は正確な治療には不可欠。陽性と判明した場合は、治療方針が変わった可能性がある」と指摘しており、死亡した患者の遺族の心情を考えれば到底納得できるものではありません。


その上で、京都市として、京都府・社会保険庁など関係機関と連係のもと、カルテやレセプトなどあらゆる資料を精査の上、可能な限りの方法・手段を講じ、徹底的な因果関係の解明と再発防止に全力で取組むべきであります。

全日本民医連綱領には、「われわれは国と資本家の全額負担による総合的な社会保障制度の確立と医療制度の民主化のために戦う」とありますが、実はこの意味は、このような詐欺的行為によって、国民の税金を詐取することであったのか、との感を深くせざるを得ません 。

科学的社会主義の理論によれば、労働者を搾取するのが資本家であります。しかし今回の事件で、労働者のための医療機関が国民の税金を詐取していたうえに、患者からも医療費を受け取っていた事実は、二重の意味で「働く人々の医療機関」が労働者を搾取していたことを意味しています。

しかも今回の不正行為は正しい検査を受けられなかった、働く人々に多大の損害を与えている可能性もあるのです。

これでは「働くひとびとの医療機関である」との看板がニセモノであったばかりでなく、科学的社会主義の理論自体が決定的に誤っていたことを証明するものです。何故ならば、科学的社会主義というのは必然の歴史法則であり、例外があってはならないからです。

尚、日本共産党提案の決議案は、今回の京都民医連中央病院の事件を、単に一部の医療従事者の行為として切り捨て、処理しようというものであり、同病院全体の重大な責任を回避するもので、到底納得できるものではありません。

また、今回正しい検査を受けることができずにお亡くなりになられた方々八十九名との因果関係の解明に言及しておらず、これでは真相究明には程遠いと言わざるをえません。さらに、日本共産党案は、京都府との合同の立ち入り検査や、診療報酬不正請求についての告発にも触れておらず、われわれの案に比較して、京都民医連中央病院に対して極めて甘いとの印象をぬぐいきれません。

以上の理由により日本共産党提案の決議案には反対するものであります。

最後に重ねて、今回の京都民医連中央病院の引き起こした重大事件に対し、徹底した真相究明を求めまして賛成討論と致します。

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