21世紀の政治理念とは何か(1)

はじめに

政治が混迷していると言われて久しい。これには様様な要因が考えられますが、やはり政治家・政党の側に大きな責任があることは当然です。そこで、本稿では最近のマスコミの近視眼的な、軽薄な政治論に惑わされることなく、日本の歴史を踏まえ、また世界情勢を睨みながら、真面目に21世紀の政治理念について考えてみたいと思います。

日本の支配者の歴史

現在日本の支配者は、言うまでもなく国民です。なぜなら、日本国憲法を見れば明らかなように、日本の主権は国民にあるからです。政治家はその国民から信託を受けているに過ぎないのです。

しかし、この原理はわずか53年前に確定されたものであって、日本の歴史の中ではまだまだ日が浅いと言わねばなりません。そこで、改めて日本の支配者の変遷について、概観をしてみたいと思います。
日本史の通説的見解(標準日本史:文部省検定済教科書)によれば、まず「日本の古代国家の中で支配層を形づくっていったのは、国家統一を進める中心となった皇室と、律令国家の官人貴族であり、また、皇室や貴族の帰依をうけた宗教的権威としての寺社」でありました。


中世(封建制度が樹立されてゆく時代)では、「武家は公家の支配と戦いながらこれをしりぞけて、みずからの封建支配を推し進めて」(標準日本史)いきました。この時代は鎌倉時代と室町時代に分けられます。また室町時代の中に南北朝・戦国の各時代が含まれています。この時代は武士と公家が日本の支配をめぐって争っていた時代と言えるでしょう。

日本の近世は徳川幕藩体制からはじまります。これは、武士が公家や寺社の支配をのがれて、領国の完全な支配権を全国的規模で確立したからです。この武士が社会の支配層である時代が、明治維新まで続きました。

近代日本の幕開けとなった明治維新以降は、立憲体制がとられたものの、あくまで天皇統治の原則が貫かれました。「明治憲法の根底に存する原理は、いわゆる国体の原理」「すなわち我が国の建国以来の基本特色は、天皇が神勅に基づいて大日本帝国を統治し、臣民はこの天皇の統治に無条件に服従する地位にあるという原理(日本国憲法概説:佐藤功)」 でありました。

しかし、これまでの歴史の俯瞰で明らかなように、日本の支配者はずっと天皇であったわけではありません。ですから、「国体の原理」などというものは、明治政府が徳川幕藩体制を否定するレトリックにすぎないことがはっきりしています。

1945年太平洋戦争の大敗北によって、初めて国民主権(民主主義)、基本的人権の尊重(自由主義)、平和主義が日本に導入されました。したがって、最初から日本人が民主主義や自由主義や平和主義について、うまく運用できると思うのは無理があるでしょう。



「公明正大」こそ21世紀の政治理念

自由主義・民主主義・平和主義は、世界の人々が多大の苦しみを経て、勝ち取ってきた人類の叡智なのです。20世紀末の現在でも、これらを超える政治理念はまだないと思います。

ただし、より良い自由主義・民主主義・平和主義を追求していくことは大変重要です。たとえば戦後民主主義の特徴は、官僚主導体制であったことは知られています。その弊害が、現在至るところに出ています。ですから、多くの政党が官僚主導体制を否定し、如何にして本当の民主主義を実現していくかに腐心しているわけです。

私は、より良い民主主義のためには、次の三つのポイントがあると考えています。すなわち、
@ 国民の政治参画システムの多様化
A 意思決定システムの透明化
B 政治行為の説明責任

そしてこれらを一言で表現するならば、「公明正大」であろうと考えています。これら三つのポイントは、要は、「道理に基づいて、国民の納得と合意」を得ることです。@からBのなかに、近時叫ばれている「情報公開」「アカウンタビリティ」「行政評価制度」などが含まれておりますが、これは「道理を明らかにすること」であり、「公明」であると言えます。また、「正大」とは、「正義を広くゆきわたらせる」ことですが、現代における「正義」とは、一方的な価値観を押し付けることではなく、「国民の納得と合意」を得ることではないでしょうか。

私はこのような意味で、「公明正大」こそ、21世紀日本の政治が重視すべき理念であろうと考えています。自由主義・民主主義・平和主義をいわば縦糸とすれば、「公明正大」は横糸のようなものです。そして、その「公明正大」を具体化するシステムと政策こそが、重要なのです。


皆さん意外に思われるかもしれませんが、公明党とは政治理念としての「公明正大」を実現するための政党なのです。具体的には、既述の「情報公開」「アカウンタビリティ」「行政評価制度(含む公共事業)」に力を入れて参りましたが、今後は「斡旋利得罪法の制定」をはじめとして、政権党の大目付として、政治を国民の監視下に置き、国民の手に引き戻す使命を担っていると言えます。そしてその役割は、野党よりも与党としての公明党の方が大きな力を発揮するでしょう。詳細はまた別の機会にさせて頂きますが、21世紀はそのような意味で、公明党が一層評価される時が必ず来るものと思います。またそのような政党にしていかなければならないと決意しております。

次号に続く

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