次期衆議院選の重要テーマについて(6) 〜年金問題について

まず、五千万件に及ぶ未照合の年金記録問題については、相当数の解明がなされてきたものの、未だに約二千万件以上のデータが宙に浮いている状態だ。これについては、政府与党はもとより国民の英知を結集して解明に当たらなければならない。公明党は最後の一件に至るまで今後も徹底解明していく決意である。

次に現行の「年金100年安心プラン」は本当に大丈夫なのか、とはよく聞かれる質問である。そこで年金制度の本質から問題点を整理していくことにする。私は、年金とは国家と国民との最も大事な契約であり、これが守れなければ国家ではないと考えている。従って、年金制度は政権が代わるたびに変更するというような不安定なものではなく、政府与党と野党・労働組合、その他国民の幅広い階層の代表との合意の上で制定・変更すべきものなのである。実際に北欧などではそのようにして実施されている。年金制度を政争の具にし、年金不安を煽り立ててきた民主党や一部マスコミの罪は深い。

現在の保険料方式の原型はすでに戦時中から始められている。その意味では65年以上の命を有しているのである。年金制度は経済成長率と出生率とに主に依存している。過去100年の経済成長率の平均は約2%であり、ほぼこの水準でこれからの100年も推定している。また出生率は1.39を基準値としているが、近年出生率は回復傾向にあり1.34を上回ってきている。今後さらに子育て支援などに努めれば、100年間では十分基準値を達成できるものと思われる。従って、「100年安心プラン」の信頼性は高いといえる。

民主党は基礎年金の全額消費税方式を主張しているが、これを実施するためには消費税率の大幅な引き上げが必要となる。先ごろ、社会保障国民会議は3.5〜12%の消費税率アップが不可欠との試算を出した。また日本経済新聞社は最低5%の引き上げを提案している。他方、民主党は消費税5%のまま可能であるというが、そのためには直ちに10兆円以上の行政改革が不可欠であり、ほとんど不可能であることは明らかだ。朝日新聞や読売新聞でも様々な検討の結果、やはり現行方式を維持しつつ改善を加えることが良いとの結論となった。

現行方式の問題点は、国民年金の未納率が高いことである。この問題に対して公明党は、保険料の追納期間を二年を超えて設定したり、25年の受給資格期間を10年に短縮する、年収200万円未満の方を対象に現在満額で66,000円の国民年金を83,000円に増額するなどの提案をしている。その他にもパート従業員や派遣社員に対する厚生年金の適用、所得に応じて国民年金保険料の一部を財政支援するなどの案もある。もっとも、基礎年金に全額消費税方式を導入すれば未納・無年金問題は解決するように見えるが、しかし、その場合にはすでに保険料を払い終えた人、途中の人、まったくの未納の人との間で深刻な不公平が生じる。これを解消するにはいくつかの方法があるが、公平さを求めるならば、結局消費税を8.5〜12%引き上げるしか方法はない。

以上から明らかなように、民主党の消費税方式にバラ色の夢があるわけではない。たとえ基礎年金がもらえるようになったとしても、消費税をこれだけ引き上げて果たして生活が楽になるであろうか。さらに、消費税は、将来医療や介護などの財源としても考慮の必要が出てくるだろう。年金制度は一度変えるとそう簡単にはもとには戻せない。与野党を問わず国民全体で、よくよくその長所・短所を検討し結論を出すべき問題である。「民主党に一度政権を任せてみたら」というような安易な判断では、年金制度は取り返しのつかない大混乱に陥る可能性があると思う。

つづく



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