このような理由から、日本政府は中韓両国に対して何度も謝罪しているにもかかわらず、靖国神社参拝ではことあるごとにもめてきた。中国の希望は、首相・官房長官・外務大臣は参拝しないで欲しいというものだ。現在の福田内閣は概ねその要望に沿う対応をしたので摩擦は小さいが、本質的解決ではない。 そこで今模索されているのは、すべての戦没者を対象に国立で無宗教の新たな追悼施設を建設すべきだとの案である。新追悼施設は靖国神社の代わりではないとの前提だが、自民党の一部や遺族会は猛反発しているという。他方、自民党の有力代議士で、日本遺族会会長の古賀 誠氏は、靖国神社のA級戦犯分祀の議論が不可避だとの認識を示している。私は前者の新追悼施設の方が優れていると考える。その理由は、戦没者も追悼する人々も、日本のみならず世界中にまたがっており、またその宗教も、無宗教も含めて様々な場合があるからだ。 歴史問題には、靖国参拝だけではなく、戦時の強制労働や慰安婦問題、第731部隊や南京事件、教科書問題など多くの課題がある。このような歴史問題を重視することを自虐的だとして無視しようとする保守派の論調も強いが、それでは半永久的に被害者である中国・韓国の怨恨は解消されない。日本の政治指導者には、大局観に立ちこれらの歴史問題を一つひとつ解決し、中国・韓国との関係を改善して、未来に向かってともに発展していくための英知と勇気が求められよう。 以上 |