歴史問題を乗り越えるには

公明党は「平和の党」としていかなる戦争にも反対であることを明確にしておきたい。未だに一部に誤解があるようだが、イラク戦争勃発時にはいち早く「戦争反対」の表明を出している。また、今回の南オセチア州をめぐるグルジアとロシアの武力衝突に対しても、即時停戦・撤退と一刻も早い国連による問題解決を図るべきと考えている。さらに、わが党の強い要請により、福田首相がクラスター弾を即時全面禁止する条約案に同意したことは画期的な成果である。

さて、歴史問題とは、いわゆる太平洋戦争・東京裁判などの一連の歴史的事件を日中韓の間でどう認識し、残された課題をいかに解決するかという問題群のことである。東京裁判史観によれば、太平洋戦争とは、1931年の満州事変から1945年8月15日までの間、大日本帝国の戦争指導者(後のA級戦犯等)が共同謀議を行って遂行した侵略戦争であったとされている。しかし一方で、東京裁判に対しては、「平和に対する罪」という事後立法によって、勝者が敗者を裁いた偽善かつ不法な裁判であるとの有力な主張がある。なぜなら、東京裁判では、米国による原爆の投下や日ソ中立条約の侵犯などの連合国側の行為は不問とされるなど、不公平な政治裁判であったとの批判がそれなりの正統性を有するからだ。

とは言うものの、日本はこの東京裁判を承認し、1951年のサンフランシスコ平和条約に調印して国際社会に復帰したというのが歴史的事実である。政治的にはそれを受け入れて今日があるのだから、今更けしからんと言っても何の解決にもならない。であるならば、例えば、A級戦犯が合祀された後の靖国神社に首相や主要閣僚が参拝するということは、この東京裁判を否定するとみなされ、再び戦争状態に戻るのかと疑われても仕方がないであろう。

このような理由から、日本政府は中韓両国に対して何度も謝罪しているにもかかわらず、靖国神社参拝ではことあるごとにもめてきた。中国の希望は、首相・官房長官・外務大臣は参拝しないで欲しいというものだ。現在の福田内閣は概ねその要望に沿う対応をしたので摩擦は小さいが、本質的解決ではない。

そこで今模索されているのは、すべての戦没者を対象に国立で無宗教の新たな追悼施設を建設すべきだとの案である。新追悼施設は靖国神社の代わりではないとの前提だが、自民党の一部や遺族会は猛反発しているという。他方、自民党の有力代議士で、日本遺族会会長の古賀 誠氏は、靖国神社のA級戦犯分祀の議論が不可避だとの認識を示している。私は前者の新追悼施設の方が優れていると考える。その理由は、戦没者も追悼する人々も、日本のみならず世界中にまたがっており、またその宗教も、無宗教も含めて様々な場合があるからだ。

歴史問題には、靖国参拝だけではなく、戦時の強制労働や慰安婦問題、第731部隊や南京事件、教科書問題など多くの課題がある。このような歴史問題を重視することを自虐的だとして無視しようとする保守派の論調も強いが、それでは半永久的に被害者である中国・韓国の怨恨は解消されない。日本の政治指導者には、大局観に立ちこれらの歴史問題を一つひとつ解決し、中国・韓国との関係を改善して、未来に向かってともに発展していくための英知と勇気が求められよう。

以上



BACKNEXT