次期衆議院選の重要テーマについて(4)

原油の高騰が著しい。これが様々な物価に転嫁されて、今後インフレを招くのではないかと危惧されている。政治としてはどう対応すべきであろうか。私は、今回の原油高騰の主たる原因をしっかりと見極めなければならないと考えているが、それは意外に明白である。米国のサブプライムローンに端を発する金融不安から、投機資金が原油市場に流れ込んでいることが大きな要因である。であるならば、米国のサブプライムローン問題を解決するしかない。しかし、これがなかなか難問である。

ご承知のとおり、サブプライムローンは米国の低所得者向け住宅ローンであるが、これらのローン債権を、民間の住宅ローン業者から、住宅抵当公社(ファニーメイ)・住宅貸付抵当公社(フレディマック)という政府の監督下にある会社が買い取る仕組みとなっている。この点が日本とは全く異なる。両社はこれらの住宅ローン債権を証券化し、大量に投資家に売却してきた。両社が発行した証券(債券や住宅ローン担保証券)は、5兆2千億ドル(約556兆円)に膨らみ、そのうち1兆5千億ドル(約160兆円)超を海外の中央銀行や金融機関が保有している。

米国の住宅価格が低落を続けているために、住宅ローン債権価格が下がる。従って両社が発行する証券価格も下落する。当然両社の株価も急落する。このような理由から世界中に金融不安が伝播したのである。米国発の金融不安・景気停滞と言える。

この問題の対応策は、まず米国がしっかりと措置を講じなければならない。先日米国の上下両院では、住宅公社支援法案が成立した。両公社に対する緊急融資と公的資金による資本注入の枠組みの整備や監督強化の他、高利のローンに苦しむ借り手が低利のローンに借り換えるのを助けるために総額3千億ドル(約32兆円)の債務保証も用意した。これらにより金融市場は一旦落ち着きを取り戻した。近々米政府は、金融市場への影響が大きいヘッジファンドの規制や、不振金融機関の一時国有化や資本注入、金融再編など大胆な対策を迫られるものと予想される。また、11月には新大統領が誕生するので、更なる金融システムの安定化や景気対策などに力を注ぐだろう。

従って、私の予想としては秋ごろには原油の高騰に歯止めがかかり、円高とも連動して輸入価格はある程度落ち着くと思っている。それに伴い日本経済のインフレ懸念も払拭できるのではないか。政府与党としては、当面の緊急対策として、漁業関係者などに対する支援措置を固めた。今後は、国民の無知に乗じた便乗値上げや物価の高止まりを監視徹底することが必要だ。その上で、大多数の国民の負担緩和という観点から、ガソリン税や自動車重量税の引き下げ等を実行することが望ましい。すなわち、道路整備計画を抜本的に見直すとともに、自動車関係諸税を簡素化し税率を引き下げることが時代の潮流であり、最大の経済対策であると強く訴えたい。

つづく



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