次期衆議院選の重要テーマについて(3)

消費税の取り扱いが大きな争点のひとつになることは間違いない。ただし、結論から言うと、政府与党が次期衆議院選で引き上げを明言することはあり得ないと思う。では、近い将来(2〜3年)はどうなのかと、必ず問われることになるだろう。個人的意見だが、これについても私は極めて慎重に考えている。すなわち、まず他の財源を探すべきであり、消費税引き上げには反対である。そこで問題の所在を整理してみたい。

自民党の中には消費税増税に積極的なグループと、これに対し、まず経済成長・政府資産の圧縮・歳出削減等に取り組むべきというグループがある。増税派の理由は大きく二つあり、ひとつは、超高齢社会にあって年金・医療・介護などの社会保障の充実、もうひとつは、日本の財政危機である。今回は前者の理由について検討する。

将来の日本の設計図として、北欧型の「大きな政府」(高負担・高福祉)をめざすのか、それとも米国型の「小さな政府」(低負担・低福祉)を目標とするのかの論争がある。前者はスウェーデンに代表され、福祉は充実しているが、税金と社会保険料の対国民所得負担率(以下 国民所得負担率)は70%を超える。消費税は20〜30%である。後者の代表格の米国は、国民全体をカバーする公的医療保険制度もないような社会である。その代わり国民所得負担率は35%程度で先進国中最も低い。日本は、消費税5%で先進国では最も低く、社会保障給付の対国民所得比率も25%程度で先進国中では米国に次いで低い。従って国際比較では、日本の現状は「小さな政府」と言える。

様々な調査をみると国民の関心は、年金などの社会保障の充実にあるようだが、国民が今後負担を受け入れてもこれを達成してもらいたいと、本当に願っているだろうか。私はどうも違うと思う。戦後の日本人は、米国の自由主義を信奉し、他人やお上の干渉をできるだけ排除する思考方法と生活スタイルを築きあげてきた。当然このような「自助の精神」は年金や医療保険制度の「共助(助け合い)の精神」とは相容れない。最低限の負担で済ませたいというのが本音だ。また、5千万件もの年金未照合問題等、行政に対する信頼感が著しく低下しているため、負担増ではなく行財政の無駄を省くべきだというのが大勢である。

こう考えると、日本は将来とも「大きな政府」へ転換することは極めて困難ではないか。他方で、基礎年金の国庫負担の2分の1への引き上げのために、必要な2兆3千億円の財源目途は未だにたっていない。しかしこれについては次回に詳しく述べるが、特別会計の剰余金(いわゆる埋蔵金)や特殊法人、独立行政法人の民営化・埋蔵金の拠出などで当面十分まかなえる。これらの財源は約50兆円にのぼるという試算もある。その他にも、「長寿医療制度の負担軽減」「障害者自立支援法の見直し」などの財源も必要だが、これらは「道路特定財源の一般財源化」により十分手当ては可能だ(公明党は2千億円分を社会保障で確保することを提案)。

このような理由から近い将来については、消費税の引き上げの必要はないと考える。しかし、長期的には年金制度・医療・介護・福祉などの将来需要によっては、国民負担の水準の再検討を迫られる可能性はある。その場合でも経済成長・政府資産の徹底的洗い直し・歳出削減など、その前提としてまずやるべきことが膨大にある。それを必ず実行させることが公明党の使命である。

つづく



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