次期衆議院選の重要テーマについて(2)

国会では「公務員制度改革法案」について、自公民が合意した。「ガソリン税の値下げ」や「長寿医療制度の廃止」については、あれ程こだわりを見せていた民主党が、実にあっさりと法案を通す気になったことを不思議に思う。私は、「公務員制度改革法案」は「省益」中心の「官僚主導体制」(「官僚内閣制」と揶揄する人もある)を打破するための重要法案であり、民主党との修正協議によりより良いものに仕上げて頂きたいと期待していた。本稿では、党の立場を離れて私個人の見解を述べる。

民主党案で評価すべき点は、これまで省庁毎に管理していた幹部人事を、今後は官房長官が作成し各大臣が首相らと協議の上任免するというものだ。これにより「省益」優先や、縦割り行政の弊害の排除を狙う。また、現代の階級制度とも言われる「キャリア制度」を廃止し、試験区分を超え能力・実績に応じて処遇・登用するとしたことは、公務員全体の潜在能力を発揮するためにも歓迎したい。

しかしながら、他方で民主党は、なぜこれまでの主張である「天下り禁止」を捨てることにしたのか。「天下り禁止」は今や国民の誰もが賛成する提案だ。また、「政治家と公務員の接触は、政務専門官以外は制限する」という政府案は、官僚の勝手な跳梁跋扈を抑えるためには極めて重要であるが、これも民主党は採用しなかった。その理由として民主党は「政治家の情報収集に影響が出かねない」からとしているが、これでは民主党も偉そうなことを言っているけれども、結局官僚依存であることを証明している。さらに民主党の主張で、採用は省庁毎という現行方式を残すことになったが、これでは「国益」のために働く人材を育てられない。内閣で一括採用し各省庁に配置・移動させるシステムの方が優れている。

この問題は、ある意味で霞ヶ関の公務員全体を敵に回す改革だ。従って与野党が英知を結集して団結し、政治主導の本来の民主政治を取り戻さねばならない。確かに自民党の中にも官僚出身政治家などの抵抗勢力はある。しかし、福田総理が民主党案を丸呑みしても良いと決断したのに、なぜ民主党は筋を通さないのか。
自民党内の抵抗勢力が民主党の反対を利用して廃案にする思惑を知って、不成立の責任を負わされることを回避したとの報道もある。しかし、民主党のこれまでの執拗さとは落差があり過ぎる。私の推論だが、「同法案は結局国民から見てあまりよくわからない内容であり、パフォーマンスや虚勢を張っても益が少ない」と民主党は判断したのではないか。そうだとすれば著しく国民を愚弄するものだ。

さて、アダム・スミスはその著書「国富論」の中で、「公務員や軍人は、生産に直接携わる労働者でなく、税によって雇用されている不生産的労働者である。政府の支出が小さく税が安くなれば、社会全体の資本蓄積が進展し、政府の不生産的労働を民間部門の生産的労働として用いることができる」(主旨)ことが述べられている。この指摘は現代でも通ずる。

公務員制度改革の目的は、最終的には「官僚の数を削減する。官僚の権限を縮小する。官僚の給与を減らす。天下り制度を改革する。」ことにある。これにより政府支出を減らし減税が可能になれば、社会全体の資本蓄積が進み、雇用の増大をもたらすことになる。次期衆議院選挙では、この改革理念とともに、道州制の導入と中央集権体制の解体など具体策を強く訴えていきたい。

つづく



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