劇場型政治の創始者とも言うべき小泉総理の外交に、私は危うさを感じている。靖国神社参拝に端を発する中国・韓国などとの外交関係の悪化を懸念するのは私一人ではない。総理の言い分は次のようなものだろう。
すなわち、「靖国参拝は公約であり信念である。それは心の問題であり、それを外国からとやかく言われるのは筋違いである。ましてや二度と戦争はしないことを誓うために参拝しているのだから、咎められる理由はない。もちろん中国や韓国の方々の気持ちもわからないではない。だから参拝の仕方も随分と配慮している。もしも外国に言われて参拝を取りやめたのでは、思想信条を曲げたことになる。それは外国による思想信条の侵害であり、越権行為である」と。
確かに靖国参拝は個人の心の問題であり、それを止めさせることは誰にもできない。但しそれは純粋の個人の場合である。日本国の総理は国家の一機関であり、その行動は一個人のものとは見なされない。日本国憲法では20条3項に「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」とあり、国家の宗教的中立、政教分離が定められている。だから高等裁判所レベルでは、総理の靖国参拝は違憲とする判決もあるくらいだ。 |