「恐慌」と「戦争」を防げるか。

今回の総選挙の最大の争点は、ひとつは世界金融危機が「恐慌」に転落することを防ぎ、確実に脱出できるかどうか。もうひとつは、「戦争」を未然に防ぐことができるかどうかである。このような指摘をしているのは私だけである。「恐慌」と「戦争」が国民を最も不幸にする。第二次世界大戦の大きな原因のひとつは世界恐慌であり、それを克服したのは結果として戦争であったからだ。

 戦後各国は、資本主義がもたらす「恐慌」の原因とその対応策について、実験と理論化を重ねてきた。しかし結論から言うと、民主党政権では、世界金融危機が再燃した時には対応が不可能で、「大恐慌」に陥る可能性が高い。民主党のマニフェストには、金融・財政論が欠落している。民主党は口を開けば「脱官僚」「政治主導」を叫んではいるが、政党・政治家が金融・財政に関して豊富な知識を有しているわけではない。また「政治主導」が常に正しい判断を下すことができるとは限らない。官僚からの正確な情報と、それを適切に判断する能力が政党・政治家に備わっていなければならない。

 国民はほとんど気づいてはいないが、今回の世界金融危機にあたって、政府与党がこれまでの経験・理論に基づいて、的確で迅速な金融・財政政策を発動したからこそ、何とか日本経済は回復してきたのである。これらの政策に対して審議を引き延ばし、すべて反対してきた民主党がもしも政府与党であったなら、間違いなく「大恐慌」を招いたのではないだろうか。

 さて、民主党の外交・安全保障政策は矛盾だらけである。インド洋での海上自衛隊による給油活動は当面継続するのか、延長反対なのか幹部の間で方針が揺れている。「米軍再編や在日米軍基地の在り方に関しては『見直し』の方向で臨む。」などは、旧社会党の反米政権を思わせる。他方で、「自由貿易協定(FTA)の締結」は、明らかに親米で日本の農家に打撃を与えるものだ。

 戦争状態にある「アフガニスタンなどでの日本の支援強化」などは、イラクでの人道支援に反対してきた従来の対応とは全く矛盾する。さらに、海外での軍事力行使に道を開く危険性がある。「ソマリア沖の海賊対処法」や「北朝鮮に出入りする船舶への貨物検査をしやすくする特別措置法案」に反対してきた民主党が、政権に就いたら賛成するのも訳がわからない。

 民主党は、旧自民党から旧社会党まで、哲学の異なる様々な政治集団が存在するために、外交・安全保障の基本理念が定まらない。これは日本の危機管理ができていないことと同じである。仮に朝鮮半島有事などで日本が侵略された場合には、ブレーキとアクセルを同時に踏むような、右往左往の事態になる可能性がある。社民党との連立政権の場合はなおさらであり、共産党から間接的に支援を受ける政権などで国を守れる訳がない。

 私は、戦後政治家の最大の課題は、「政治は、先の大戦をなぜ防ぐことができなかったのか。政治は、なぜ国を滅ぼしアジアの民衆に多大の損害を与えてしまったのか。」ということを、歴史から真摯に学ぶことだと思う。そこを出発点として初めて、平和を守り国民の生活を守ることができるのだ。

 戦前の二大政党の手段を選ばない激しい権力闘争が、軍部の介入を許し破滅に至ったことは前々回に述べたとおりである。ここで指摘しておきたいことは、昭和5年に満州事変が勃発した時に、「熱狂的な愛国主義的雰囲気の中で、共産主義者・社会主義者・自由主義者の中から、国家社会主義などへ転向するものが少なくなかった」という事実である。共産主義者・社会主義者の諸君がいくら弁明しようとも、戦争を防ぐことはできなかった。

 このような反省から、資本家でもなく労働組合員でもない、真の民衆政党「公明党」が創られたのである。公明党は「平和」と「大衆福祉」の党であり、庶民大衆の目線で二大政党の行き過ぎにブレーキを踏んだり、間に入って調整をする役割が求められている。何より「恐慌」と「戦争」を防ぐのが公明党の使命であると決意している。

つづく

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