公明党のめざす国づくりとは

現在の日本社会が抱える最大の問題は何か。経済、財政、年金、介護、医療、教育、安全保障など多くの分野で問題が山積している。しかし、私はそれらの根底に、人々が未来に対して安心と希望を持てないでいることが、最大の課題であると思う。

 あの秋葉原での無差別殺傷事件に象徴されるように、社会に閉塞感が漂い、溜まった憤懣が、何かをきっかけにして暴発する事例が多発している。毎日のように、目を覆いたくなるような犯罪が報道されている。加えて自殺者の数も年間3万人を超える事態となっている。

 その要因としてリストラ・派遣切り、就職・受験の失敗、いじめなどが指摘されるが、それらはきっかけに過ぎない。本質的原因は人々が分断化され、孤立化していることだ。その背景には、人間を単なるモノとして扱い、組織の歯車や部品として簡単に取り換え、切り捨てていく社会風潮。権利と履き違えた利己主義が蔓延し、人の気持ちが汲み取れない感受性の欠如した人々の増加。行き過ぎた都市化と個人主義によって人間関係が希薄化したことなどがある。そのため挫折した時にも一人で悩み絶望感に襲われることになる。

 公明党は、設立当初から「一人の人を大切にする政治」を掲げている。すなわち、人の苦しみや喜びを、わが苦しみや喜びとできる社会。人を手段ではなく、目的として尊重する社会。強い人は弱い人を守る社会。日本に住む外国人を含めたあらゆる人々が、困った時には助け合う社会。地域の人と人との善良な結びつき、絆を大切にする社会。温かく安らげる家庭。不安を安心に変え、絶望を希望に変える。そういう国づくりを公明党はめざしているのである。

 誤解して頂きたくないのは、人を大切にすることは人を甘やかすこととは別である。どの分野においても我慢・辛抱、修行は必要である。権利ばかり主張するのではなく、社会に対する義務を果たすべきである。その上で真面目に努力し、人のために尽くし、実績も残した人は正当に報われるべきである。

 このような政治哲学・理念を「生命・生存・生活を最大限に尊重する人間主義」と呼んでいる。この人間主義に立脚してすべての政策を立案・判断している。たとえば、中央集権体制は、東京圏一極集中に伴う大都市化によって、ますます人々が孤立化・分断化されるとともに、地方の衰退を招いてきた。従って、今再び人々の絆を再構築し、地方の活性化を促すために地方分権体制へと転換することをめざすのである。公明党は、単に地方に権限と財源をよこせとか、国の直轄事業負担金などの地方負担はけしからんというような表面的な理由から主張しているのではないのである。

つづく

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