何故公明党なのか

自民党とはいかなる政党か。その特徴は、多面的に分析する必要がある。まず、自由な経済行動を掲げる自由主義であり、社会の伝統や慣習を重んじる保守主義である。支持者には、大企業から中小企業に至るまでの経営者層、地域の地主、名士、世話役などとそれに連なる方々が多い。議員もそういう地盤から生まれてくるので、経済的には比較的裕福で地域の名望家であり、必然的にこれまで世襲議員が多くなった。

 他方、現在の民主党はどうか。所属議員には、かつての自民党、社会党、民社党、松下政経塾、サラリーマン出身者、学生運動家であった方々等々、実に多種多彩である。従って支持者も自民党と同じ層もいれば、大企業の労働組合員も相当数いる。自由な経済行動を標ぼうする人もいれば、経済規制を強化して労働者の権利を守るべきだという人もいる。外交・安全保障でも、自衛隊の海外での武力行使を積極的に認めようという人から、いかなる武力行使も容認しないという社会主義者までおり、政治理念はバラバラと言われても仕方がない。もちろん自民党にも幅広い考え方はあるが、党としてのまとまりはまだ自民党には及ばない。

 公明党は、資本家でもない、大企業の労働組合員でもない、庶民・大衆から生まれた政党である。日本の全企業の98%は中小企業であり、日本の全労働者の71%は中小企業で働いている。中小企業で働く労働者とその家族のことを真剣に考えているのはどこの政党であろうか。自民党は中小企業経営者のことは考えているが、従業員のことはあまり考えていない。民主党は、大企業の従業員主体の政党であることは明白である。地方議員の数もまだまだ少ない。むしろ、中小企業で働く労働者の側に立ち、地域に根差して現場で汗まみれになって、大衆の声をすくいあげてきたのは間違いなく公明党である。

 さて、民主党が政権交代の旗印としているテーマが、「官僚内閣制の打破」と「中央集権から地方分権」である。これは公明党としても大枠としては異論がない。自民党も同様だろう。もっといえば、これは日本の戦後政治全体を貫く大テーマなのである。21世紀の日本の立法と行政の関係、議院内閣制はどうあるべきかという問題である。民主党政権で改革できるというようなテーマではなく、私は少なくとも自民・民主・公明の大連立政権でなければ、とても官僚の抵抗を排して遂行はできないとみている。

 政権交代のテーマとしては、北朝鮮問題をいかに解決して日本の平和と安全を確保していくのか、また、庶民大衆が安心と希望をもって暮らすには何をすべきか、高齢化社会の社会保障を支える政策と財源はどうするのか、農業再生のために減反政策は廃止するのか、などの具体策を問うべきである。その上で、全体として日本をどのような国にしようとするのを示す必要がある。民主党は「国のかたちの改革」にこだわっているが、大事なのは「国の中身の改革」だ。

 また、日本の場合、米国や英国のように政権交代によって、世の中の流れがすっかり変わるということはあり得ないと思う。日本は欧米のような階級社会ではない。価値観の先鋭な対立による社会の分断は避けるべきである。現在の日本社会を覆う病巣は、旧い欧米型二元論の思考(その最たる典型は共産主義である)の導入によって、人々が分断化・孤立化されつつあることだ。黒か白か、資本家か労働者かという思考方法は分析には有利で解りやすいが、現実の社会はそれだけでは運営できない。

 むしろ、価値観の違いなどはあっても、人と人をつないでいく思考方法こそが求められているのではないか。平和と人間の幸福の観点から、人間と人間の新たな絆を再生していくこと。それこそが公明党のあり方であり、また政治本来の使命でもある。自民か民主かという二元論の思考の罠に陥ることなく、社会の根本的あり方から考えて頂きたい。

つづく

BACKHOME