香港・政治経済情勢視察報告(2)

香港経済の特徴は、自由で開放的な経済システムです。コモンロー(英米法)の透明な法制度や簡素で定率の税制に特徴があります。法人税は16.5%、所得税最高税率15%、キャピタルゲイン・配当・利子には非課税。相続税もありません。関税もゼロです。大変魅力的です。

このような有利性を生かして、香港の大財閥などが、製造拠点を広東省などに設けるとともに、原材料の輸入・輸出はすべて香港を窓口にして行っています。また、香港港は24時間365日対応可能で、IT化と機械化が極めて進んでいます。ですから、香港港は世界第3位の貨物取扱量を誇るわけです。さらに、香港空港は世界でも有数の効率性と利便性を有しており、そのため貨物取扱量は世界第2位となっています。

香港株式市場の時価総額は世界第7位で、国際金融拠点でもあります。通貨政策は、1米ドル=7.75〜7.85香港ドルのペッグ制。08年のリーマンショックを受け一時香港経済は停滞したものの、後背地の中国経済のテコ入れによって、順調に回復。2010年の実質GDP成長率は5~6%と予測。

【写真】自由主義経済により発展を続ける香港

中国国内の過剰資本が、株式市場・不動産市場に流れたため、香港マーケットは活性化されましたが、高級不動産価格が急騰し社会問題となっています。中国当局がいつ金融引締め政策に転じるかが、市場関係者の関心事項です。

香港当局は、金融・観光・貿易物流・専門職サービスという4つの伝統的な重点産業に加え、今後、教育サービス・医療サービス・検査認証サービス・環境産業・技術革新・文化クリエイティブの6分野を新たな重点産業として、育成する方針です。

03年に中国との間で締結した「経済連帯緊密化取決め(CEPA)」が、香港の経済発展に寄与していることは間違いなく、今後日本でもこの議論が活発になると思われます。もっとも香港は農業分野が小さいためCEPA締結が可能でしたが、日本の場合は悩ましい判断が求められます。

【写真】香港貿易発展局を訪問=6日

日本の大企業はすでにある程度、香港の経済優位性を利用して進出していますが、今後、中小企業においても香港をもっと利用できのではないかと感じました。香港には、低税率・簡素なルールといった利点の他にも、汚職にはきわめて厳しいルールがあります。商売をするのに賄賂が不要なのです。しかも、中国をはじめ世界中からビジネス情報が集まっており、販路拡大に苦しむ中小企業にとってはチャンスが広がっています。地方の中小企業をサポートする地方自治体も香港にもっと目を向けても良いのではないでしょうか。すでに日本のある地方のラーメンなどが、香港で紹介され成功しているそうです。また宮崎県などもマカオに牛肉の売り込みに成功しています。

今回の視察を通じてあらためて、自由主義経済の素晴らしさを実感しました。もちろん格差はありますが、しかし貧困の最低水準自体が自由主義経済によって引き上げられるので、社会主義経済体制よりは優れていることは明らかです。しかも香港では、格差解消のために社会保障システム(福祉・年金)なども整備が進んできています。

日本の成長戦略としては、やはり中国をはじめとするアジア諸国とのFTAやCEPAの締結が大きなポイントとなるでしょう。これらの国々の発展を日本も共有できるかどうかに、日本の発展がかかっていると痛感致しました。しかし、それはあくまでも民間企業の自由な活動が基本であり、それを後押しする政府や地方自治体の役割が重要であるということです。民主党政権のように大臣が先頭に立って物を売りに歩くようでは、所詮発展途上国の経済体制であり、一時は良くても、結果として日本経済の自立的発展にはつながらないことは、銘記しておかねばなりません。


BACKHOME