政治の焦点

政治の焦点

民主党に対する疑問

このほど民主党の新代表に鳩山由起夫氏が就任された。しかし、依然として小沢前代表の辞任理由となった偽装献金問題は説明されていない。これでは、この疑惑を隠すために代表が交代したとしか思われない。しかも、小沢前代表は選挙担当の副代表として大きな実権を握るという。ロシアのプーチン大統領と同じであり、小沢傀儡政権と揶揄されても仕方がないだろう。

 また、現在の民主党が、政権与党に対する理念・政策の対抗軸を国民に対して示せているのか。これも全く不明確である。小沢氏はもともと自民党で大きな力をもっていた人であるし、鳩山氏や岡田氏も自民党にいた方々である。代表選挙でも民主党が、自公政権とは異なって、日本の国をどのような方向に導いていこうとするのかが明確ではなかった。民主党の主張は、実は自民党とほとんど差異はないのではないか。単に、今の自民党に対して、昔の自民党が争っているだけではないか。

 もっとも、小沢前代表は、「生活が第一」というキャッチフレーズを出されてはいる。しかし、これも公明党の理念とほとんど同じだ。公明党は従来から「生命・生存・生活を最大限に尊重する人間主義」を主張している。このままでは自公政権と何ら変わりはない。

 恐らく、鳩山氏は一部で「官僚内閣制」とも言われている「官僚主導の政治体制」からの転換を旗印にしたいのであろう。しかし、「官僚主導の政治」など誰が政権を担当しようともあってはならないことで、政治の対抗軸以前の国家の基本に関わる問題である。すなわち、民主主義国家では、立法府の意思に行政府は従わなければならないのであって、当然のことである。では、現在の自公政権は「官僚主導の政治」に陥っているだろうか。私は決してそうは思わない。官僚主導であれば、これだけの経済対策は打てないだろう。

 政治はその哲学・理念に基づいて、国民の英知を結集して政策を作る。その場合、官僚が政治の哲学・理念に沿う政策のアイデアを出すことは何ら問題ではない。それが仕事でもある。大事なことは、政治が明確な価値観のもとに官僚を指導・コントロールすることである。ところがこれまで自民党の一部には、明確な哲学・理念を打ち出さずに、官僚に政策を丸投げしていたこともあったようだ。この点は改める必要はある。しかしこのことが政権交代の理由になるとはとても思われない。

 むしろ、国民にとっては、政党がどのような国づくりを目指すのか、その哲学・理念と具体的政策が政権交代の判断基準となる。少なくとも、今の民主党には、米国の民主党と共和党、あるいは、英国の労働党と保守党のような明確な対抗軸は打ち出せていない。

 その理由は、民主党には、かつての自民党から社会党まで実に様々の主義主張が混在しているからである。今は政権交代のチャンスがありそうなので、特に外交や安全保障など紛糾する課題は議論を棚上げすることで、まとまっているに過ぎない。選挙互助会である。仮に政権交代を果たしたとしても、各グループが自己主張を強め過ぎると、内紛が起きて崩壊する可能性もある。

 冷戦崩壊による共産主義体制の失敗と、その後の新自由主義体制の欠陥が露呈された今、世界の潮流が注目している政治哲学は、公明党の「人間主義」である。日本の企業の98%が中小企業であり、全労働者の71%が中小企業で働いているという現実の中で、「庶民・大衆の幸福」を第一に考え行動する政党が公明党である。残念ながら、自民党も民主党も「庶民・大衆」のことを真面目に考えているとは思えない。中小企業や、そこで働く人々こそが豊かになり、希望と安心をもって暮らせる社会をつくることが、公明党がめざす国づくりである。それが日本の繁栄の基盤となるのである。


つづく

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