政治の焦点

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北朝鮮のミサイル発射問題を考える(2)

今回の北朝鮮によるミサイル発射に関して、国連安保理の議長声明が出された。当初、日本が求めてきた拘束力の強い新決議は採択されなかったが、異例に強い内容になっており、まず評価できるものと言えよう。

 議長声明では、「発射は安保理決議1718に違反していること」、「北朝鮮を『非難』すること」、「北朝鮮は決議1718が定める義務を全面的に順守すべきこと」、「北朝鮮がさらなる発射を行わないよう要求すること」、「国連加盟国に1718で定められた義務の履行を要請すること」、「制裁委員会に、北朝鮮への移転を禁じる核ミサイル関連物質・物品などの具体的な品目と、資産凍結対象となる団体のリストを4月24日までに報告すること」、「六カ国協議の枠組みを支持すること」など、詳細に規定した。

 これに対し北朝鮮は、早速「六カ国協議に二度と絶対に参加しない」との声明を発表し、「使用済み燃料棒を再処理する」として核施設の復旧を明確にした。北朝鮮のこの態度は、議長声明が予想外に強い「非難」となったことへの驚きとともに、米国を直接交渉に引き出す狙いがあると思われる。

 超党派の日朝国交正常化推進議連のメンバーが、米国大使館を訪問し「米朝協議を開くよう」要請したらしいが、北朝鮮がこのように反発したからといって決して慌ててはいけないと私は考える。また、某民主党議員に対して「米国高官が直接交渉に乗り出す用意がある」との報道も流れたが、私はそれも容易に信じがたい。米国はそのように単純ではない。あくまでも六カ国協議を盾に外堀を埋めてくるに違いない。

 このままでは、北朝鮮はますます孤立化するだけである。米国は北朝鮮との直接交渉は絶対にすべきではなく、六カ国協議への北朝鮮の復帰を粘り強く待っていればよい。今の北朝鮮にはたとえ核武装をしたとしても、電力をはじめ戦争を遂行できるだけの生産能力がない。また国民は疲弊しきっている。もちろん、核・ミサイルや技術を他国に売却して外貨を稼ごうとするだろうが、それは十分監視阻止できるし、成功しても高が知れている。ミサイル発射の彼らの目的は、日米韓から軽水炉などの資金援助を引き出すことだ。いずれ理由をつけて戻ってくる。

 もっとも、六カ国協議の議長国である中国は「関係国が冷静で抑制のきいた対応をすることだ」として、制裁強化につながるリスト作りにも消極的な姿勢を示した。また、米朝協議に期待をしているようだ。しかしこれも北朝鮮の側に立つ意見表明である。私は、軽々に米朝協議などに期待するのではなく、まず日米韓の連携を密にし、さらにロシアとの関係改善を模索するなかで、じっと北朝鮮の出方を見守るべきであると思う。我慢比べの時である。


つづく

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