政治の焦点

政治の焦点

世界金融危機脱出のポイント

麻生政権が独り相撲をして勝手に自滅しているとしか言いようがない。別に民主党が何か良いことをして得点をあげているわけではない。公明党は一応連立与党ではあるが、空いた口がふさがらないという感じだ。「次の総選挙の比例区では、どの政党に投票するか」とのある世論調査では、民主党の方が42%で、自民党の26%をはるかに上回っているが、政党支持率では両党とも35%程度と同じレベルだ。どうも自民党支持者の4分の1くらいが、比例区では民主党に投票すると答えているのではないか。

 従来の自民党支持者が一度民主党に政権をやらせてみて、自民党にお灸をすえようとしているのが窺える。自民党はその統治能力が疑われているのである。ということは、自民党としてやるべきことは、内紛ばかりしていないで、一致結束して党の総力をあげて統治能力を回復することである。頼りがいのある政党として、国民の信頼を取り戻すことができるかどうかである。少なくとも従来の自民党支持者の信頼を取り戻しさえすれば、良い勝負ができることを、この数字は示している。

 私が現場を回っていて感じるのは、確かに「一度民主党に政権を任せてみては」という風潮が増していることだ。しかし他方で、経営者の方々や各種団体のリーダーの多くが、「仮に民主党が政権を獲ったとしても、民主党もバラバラですぐに崩壊してしまうのではないか」という危惧を抱いているようだ。そして、「その時にはまた自民党に政権がもどるかもしれないから、今あまりじたばたしても仕方がない。いずれにしても、政治のキャスティングボードを握るのは公明党だろう。」との見通しを示されている。

 さて、世の中は大不況の様相を呈しており、特に正規・非正規を問わず雇用問題が深刻な危機を迎えている。そのため世間では若者たちの間でちょっとした、小林多喜二の「蟹工船」ブームになっているという。しかし、1929年にはじまった世界大恐慌の教訓として肝に銘じておかなければならないことは、国家社会主義(かつてのドイツ・イタリヤ・日本)や、数多くの共産主義国家の実験は完全な失敗であったという歴史的事実である。「蟹工船」は、共産主義誘導のための物語であるという解釈もあるのである。我々は、歴史に深く学び同じ失敗を繰り返してはならない。

 なるほど資本主義には問題もある。矛盾もある。しかし、そのすべてが崩壊しているわけではない。私は、規律ある資本主義・自由主義・民主主義こそが求められていると考えている。今回の金融危機の原因は、米国のデリバティブ商品など金融資本市場に対する規制がほとんどなく、証券会社やヘッジファンドなどが暴走したことにある。自由な発想は尊重されるべきだが、やはりそこには一定の規制が不可欠である。さもなければ消費者の利益は守られない。米国が早く不良債権を分離するとともに、様々な内需拡大政策を通じ、規制された資本主義として再出発することが、世界金融危機脱出の第一のポイントである。

 前回も述べたが、第二のポイントは国際的に協調した内需拡大政策の実行である。すでに中国の株式市場は低落が止まりつつある。内需拡大策も着実に遂行されている。日本も一刻も早く予算および関連法案を国会で通し、実行しなければならない。民主党は政治ゲームに明け暮れている場合ではない。公明党は先ごろ太田代表が、「日本再生の五つのシナリオ」構想を三月号の中央公論紙上で発表した。「環境技術立国」、「社会保障の充実」、「日本農業の再生」、「教育の再生」、「悪玉論を超えた公共事業の促進」の5分野である。これらに加えて、低所得者層対策の重要性を訴えている。是非ご一読をお願いしたい。

 第三のポイントは、自由貿易体制の維持であり、それは保護貿易主義の排除でもある。このことも前回指摘したとおりである。

つづく

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