政治の焦点

政治の焦点

〜非常時の経済政策について

世界経済、日本経済の先行きについて多くの人々が不安に駆られている。百年に一度とも言われる資本主義経済の危機の原因は、すでに何度も述べているように、米国の金融市場の暴走によって発生した不良資産がどれほどの規模にのぼるのかが正確につかめないことにある。米国は、まずこれらの不良資産を着実に分離処理する一方、金融機関への資本注入によって、信用不安の回復に努めるしかない。その延長線上にはビッグ3への資金援助などもありうる。その上で、大規模な減税、公共投資、金利の引き下げなどによって実体経済の需要拡大と雇用創出に全力をあげなければならない。オバマ新大統領も概ねこの方向で経済政策を進めると伝えられている。

 それでは日本経済はどうすべきか。私が信じられないのはこの未曽有の経済危機にあたっても、財政再建や社会保障財源確保のために、消費税の引き上げ論議を麻生総理や自民党が進めていることである。もちろんそれらは大事なことではあるが、非常時の優先順位としては甚だ疑問を感じる。この期に及んでも、財務省の代理人と思われるような議員もいらっしゃる。東京だけを見ていると地方がいかに疲弊しているかがわからない。政治家としての信念は大切だが、それが過剰信念となると柔軟性を欠き判断を誤ることもある。

 少なくとも世界のどこの国の歴史をみても、財政再建を果たして経済が回復したというような国はない。逆に、経済成長をしてはじめて財政再建が実現したというのが歴史的事実である。

 消費税論議の出発点は、まず年金や医療などの社会保障財源がどのくらい不足しているかである。しかし、この議論が十分国民の前で尽くされているとは思えない。もちろん基礎年金の国庫負担割合を1/2へ引き上げる財源として毎年2.3兆円が必要であり、当面2年間は特別会計の剰余金でまかなうことになっているので、いずれ安定した財源の確保が不可欠であることは言うまでもない。しかし、それでも公務員人件費の引き下げや定員削減などはどうするのか。道路財源の一般財源化でわずか600億円しか社会保障財源に回さないのはいかがなものか。また、経済成長が軌道に乗れば何兆円もの財源は確保されるので、その時には消費税の引き上げは不要となるのではないか、など議論の余地はまだまだ残っている。

 さて、今回私が提案したい実体経済回復のための政策は、「家庭や会社・工場等の太陽光発電電力を高い価格で電力会社に買い取らせる。場合により電力会社には財政支援する。」というもの。現在、日本の太陽電池は、光を電気に変える変換効率が向上してきており、住宅用の出力3キロワット級の太陽電池で、年間630リットルの石油相当の電気を作れる。これを住宅の屋根や事業所の8割と主要公共施設などに設置できれば、年間発電量は国内総電力需要の約3割をまかなえると言われている。これは原油5千万キロリットルの燃焼分に相当し、CO2の年間排出量が1.3億トンも削減できる。

 この政策が実現できれば、一気に普及が進み発電コストも著しく低下するであろう。実際にドイツでは、電力会社に対し高い価格で太陽光発電の電力買い取りを義務付けたところ、太陽光発電が急スピードで普及した。地球温暖化対策、原油価格の不安定さ、原子力発電の危険などを勘案したときに、太陽光発電の推進は資源エネルギー分野での大きな構造改革となる。さらに、太陽光発電部品製造の他、民間の建設需要、公共投資などかなりの需要拡大が見込めるため、危機の経済対策としても有望であると考える。


つづく

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