政治の焦点

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〜福田総理の辞任と今後の政局

福田総理の突然の辞任に対して、またもや「政権の放り出し」と、マスコミや野党などから批判が上っているが、今回は相当考え抜かれたうえでの決断であると私は思う。様々な憶測が飛び交っている。中には公明党との軋轢が主因であるかのような記事がある。これは認識の誤りであり、公明党を誹謗するものだ。支持率の低下や自民党内の圧力、公明党との意見の違いなど多くの要因があったに違いないが、福田総理はつまるところ、大きな政治の流れをよくわきまえ、名聞名利を捨てて国家のため、国民のため、党のために自ら犠牲になったのだ。これだけの行動はなかなかできないことだ。

 私は今から15年も前の福田衆議院議員を知っている。故福田赳夫総理の印象とは全く違う実に静かな方だなと感じた。一年前に突然総理を引き受けた時も、つなぎ役としての己の役割は判っていたはずだ。進軍ラッパを鳴らして突き進むリーダーではなく、誠実で実直な人柄と大人の対話によって、ねじれ国会という難しい局面を打開しようとされた。その真骨頂は小沢民主党代表との大連立構想であった。あの時、小沢代表も危うく政治生命を失くしかけたことを、多くの国民は鮮明に覚えている。民主党の子どもじみた対応によって大連立は頓挫したが、小沢代表も正にその子どもたちに引きずられて、結果として日本の政治のレベルはドタバタ劇にまで落ちた。

 政権交代こそ日本の政治に必要だと民主党はいう。しかし、それには「国民のためになる」という前提がある。国民本位の政治が目的であって、政権交代はその手段のひとつに過ぎない。仮に民主党が政権を取っても、今のままの官僚制度では国民本位の政治はできない。そのため福田総理は、まず「公務員制度改革」から着手したが、政府与党の抜本改革案に対して、何と民主党はそれは厳しすぎるとして、「総合職の一括採用」や「公務員の政治家との接触制限」等の条項を削除させたのである。これでは省益優先の体質や官僚主導政治は変わらない。驚くべきことだ。こんなことは国民は誰も知らない。民主党の戦略は、「細かい政策の詰めはどうでも良い。とにかく政権さえ取れば、たとえ実行できなくとも国民には何とでも説明がつく。今は国民受けする政策を打ち出しておけば良い。」というものだろう。

 福田総理の大きな実績は、「道路特定財源の一般財源化」「地球温暖化防止のための新たな枠組み作り」「消費者庁の設置」など地味ではあるが、1年間という短期にもかかわらず、既得権益の抵抗が激しい大改革に着手したことだ。しかも「嘘をつかない」、「虚勢を張らない」、「誠実」、「相手の気持ちを汲む」など、多くの政治家が失いかけている大事な徳を持っておられる。にもかかわらず全く評価されない。むしろ、テレビなどでパフォーマンスが上手く、政敵をやっつけることが得意な政治屋が評価されるおかしな時代になってしまった。

 さて、今後の政局であるが、自民党は政策論争を中心とした総裁選によって新総裁を決定するだろう。その後は、臨時国会で新総裁が首相に指名され、首相の所信表明演説後に解散する(9月末)か、補正予算案の審議に入るも民主党の反対で成立の目途が立たない場合に解散する(10月中旬)か、のどちらかである。国民の立場からすると前者の臨時国会冒頭解散が望まれる。それが民主主義の王道であるからだ。なお、野党が早期解散をと叫んでいるが、それは本心ではない。本当は福田政権が長続きして支持率が低迷し、政権が完全に行き詰った時に解散してもらいたいと願っていたのだ。ところが余りにも早く辞職したので、想定外の事態に悔しがっており、それで無責任極まりないとか、放り出しは許せないとかいっているに過ぎない。今度は政権交代間違いないと油断して簡単に小沢代表の三選を許し、選挙準備も十分でないので、民主党は大変焦っていると思われる。

以 上

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