政治の焦点

危うい民主主義(その3)

〜それでも「長寿医療制度」は必要だ!

多くのマスコミは「長寿医療制度」に関して、徹底的に批判を繰り返している。しかし、これは一部の情報に基づく著しく偏った報道姿勢であると言わざるを得ない。現状の「国民健康保険制度」(以下『国保』)など医療保険制度の問題点を正確に認識すれば、「長寿医療制度」には相当の長所があることが一目瞭然である。にもかかわらず、マスコミはその巨大な影響力を行使して同制度を廃止に追い込もうとしているとしか思われない。報道機関は公正・公平な報道を義務付けられているはずだ。国民は「おかしいな」と思ったら、直ちに報道機関に対して意見を述べるべきである。私も二度程あるテレビ局の報道内容に対して抗議メールを送った。

 大多数の高齢者は「国保」に加入している。「国保」は市町村単位に運営されているが、そのほとんどが極めて厳しい財政状況にある。私が以前市会議員をしていた頃(平成16年)の京都市の国保は、累積赤字で100億円を超えており、かつ、毎年赤字すれすれという状況であった。原因は、高齢者の割合が高く(75歳以上の一人当たり医療費は現役世代の約5倍)、自営業者など現役世代が少ないからである。従って、保険料は高齢者も高かったが、それ以上に年収400万円程度の方で、上限の保険料(月額52,000円程度)になってしまうのである。これは異常事態である。このままでは確かに「国保」は崩壊してしまうと感じた。

 京都市のような大都市でもこのような状態であれば、全国のほとんどの自治体「国保」は破綻寸前といっても過言ではない。これら「国保」を救うために、今回の「長寿医療制度」は導入されたのである。これによって、現役世代も高齢者も安心して医療が受けられることになった。しかも、低所得者の保険料は多くの都道府県で低下するであろう。厚生労働省は正確な調査はしていないとしているが、舛添大臣が推測で語った7〜8割の方は安くなるとの発言は、決して間違っていないと思われる。なぜ保険料が安くなるのか。それは、「国保」のような資産に応じ負担する資産割や世帯ごとに課す世帯別平等割が、新制度にはないこと、また、これまでの市町村単位から都道府県単位の運営に変更したことで、支える人が多くなったからである。

 東京23区や名古屋市などで「国保」よりも保険料が高くなったとの報道もある。しかし、それはこれらの大都会では「国保」に特別の保険料軽減策を導入していたが、今回の制度移行により廃止してしまったからである。この問題は各地域で改めて工夫すれば解決できる問題である。また、これまで息子や娘の扶養家族になっていた高齢者は、新たに保険料を支払うことになったが、公明党の努力で半年間は全額免除、次の半年間も9割免除という経過措置まで用意しているのである。多くのマスコミは極めて特殊な負担増の事例を取り上げてことさらに騒ぎ立ててきたとしか思えない。

 それにしても、自民党の一部の国会議員は情けない。これまで十分勉強していないせいか、選挙前に批判を受けて浮き足立っている。悪しき大衆迎合である。今後の高齢化の進展を鑑み、国民のことを真剣に考えるならば、同制度はどうしても必要不可欠であることは明らかだ。さらに、「国保」も今後都道府県単位に改変していくことが急務なのである。政治は本質的、大局的に判断していくべきものである。

以 上


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