政治の焦点

政治の焦点(第44話)

〜安倍総理の辞任をどう生かすか

所信表明後の総理大臣の辞任という前代未聞の事態に、驚愕された方は多いだろう。一国の総理として無責任極まりないとの批判は当然だ。もちろん、総理の職責の大きさとそれに比例してかかる重圧が想像を超えるものであることは承知している。また体調不良もあったであろう。しかし、如何なることがあろうとも、政治指導者としてはここで辞任してはいけない。つらいけれども歯を食いしばって頑張り貫かなければなければならない。参議院選挙の大敗にもかかわらず内閣改造までして踏ん張ったのだから、たとえそれが騙されたと解ったとしても、何とかテロ特措法の成立まではやり遂げて、局面の打開を図るのが男子の本懐だ。政治は結果がすべてである。

 政治指導者の倫理としては辞めるべきではなかったが、政治的効果はそれとは全く別物である。安倍総理が辞任したことで流れが変わる可能性が高いと私は思う。新しい総理が、参議院選挙の大敗とその原因を分析し、民意をきちんとくみ上げる。小泉・安倍の路線とは異なる方針を出して、それを着実に実行していく。そうすれば次第に局面は変化していくものだ。民主党もどのような敵失がでてくるかわからない。

 民主党は、「今すぐ政権を民主党に禅譲するか、もしくは(参議院選挙の大勝の余韻が冷めないうちに)早期に衆議院の解散・総選挙をやるべき」と言う。しかし、国民は与党にお灸をすえたけれども民主党に政権を任せるとは言っていない。安倍総理が辞任した責任は自民党にあるのだから、ここはまず自民党が事態を収拾することが一番大切だ。政府与党は国民のための予算と政策を立案し、民主党の対応が政権政党にふさわしいか、それとも、何でも反対の無責任な政党なのかを国民が見極めてから、然るべき時に解散・総選挙をやればよい。

 公明党としては、新総理の人物と理念・政策がわが党と相容れなければ、連立政権を維持できないことになる。他方、私は今のところ民主党には政権担当能力はないとみている。小沢党首は、自民党幹事長時代に湾岸戦争危機とそれに続くPKO法制定を主導したように、対米協調・国連重視で、国連軍への自衛隊派遣容認など「普通の国」をめざすと言っていた。テロ特措法のみならず、イラクへの人道支援にも反対する小沢党首は同一人物とは思えない。これではかつての社会党のようだ。時代と世界の状況を俯瞰すれば、平和憲法の範囲内での国際貢献活動は、日本が国際社会で生き残っていくためには不可欠である。

つづく。

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