政治の焦点

政治の焦点(第40話)

快刀、乱麻 ( 年金問題 ) を断つ!

年金記録問題が喧しい。5千万件もの未統合の年金記録が残ってしまっているからだが、その原因ははっきりしている。それは、社会保険庁が年金記録の統合への努力を怠り、記録管理が杜撰だったことにある。その根底には、公務員の身分に安住して国民の視点を欠き、数々の不祥事を生んできた社会保険庁の組織としての体質がある。その上で、この10年間の社会保険庁長官の責任はもとより、報告を受けていなかったとはいえ、与党の各大臣に政治責任があることは当然だ。

 しかしながら、平成8年に基礎年金番号の統合を決断した当時の厚生大臣、菅 直人・民主党代表代行の責任は決して免れるものではない。実は、同年の参院本会議で、公明党の山本 保参院議員が、基礎年金番号導入の諸課題について「多くの国民は、大丈夫かと心配している」と質問したところ、菅大臣は「徹底した対策を講じ、万全を期してまいりたい」と答弁しているのである。菅大臣が約束したとおり、当初から十分な準備や対応ができていればこれほどの問題にはならなかったはずだ。

 先日のテレビ朝日の報道ステーションでも、田勢康弘氏が「菅さんだって厚生大臣やってたわけですからね。あなた方にだって責任あるだろうというのが国民の声だろうと思いますよね」と指摘している程だ。従って、年金記録問題は現在の安倍内閣や与党だけの責任問題ではなく、与野党にわたる国家全体の責任問題だと言わざるをえないのである。

 そこで、与党は国民の不安を一刻も早く解消するため、大方針を示した。それが「年金時効撤廃特例法案」である。年金記録問題は大問題だが、解決方法は簡単であると私は思う。それは、「受給者の立場に立って年金番号をきちんと統合し、時効を適用しない」ことに尽きるのである。政治の真骨頂は、大混乱の時こそいち早くリーダーシップを発揮することにある。細かなことはその方針に従って解決できるのである。

 野党の主張は一見もっともらしく聞こえるかもしれないが、実は重箱の隅をつついて、審議引き延ばしと法案つぶしを狙っているに過ぎない。この法案が通れば与党の得点になるからだ。国会は6月20日過ぎには閉会し、その後すぐに参議院選挙が待っている。野党はこの問題を政争の具にし、年金不安を煽りにあおって参議院選挙に勝ちたいという魂胆が明白である。強行採決とみせかけるために、TV放映されている国会審議の場で大暴れする野党議員の醜態は、国会議員の品位を下げたのみならず、政治への信頼をさらに失わせた。

 産経新聞社説は「他の野党も、単に批判するだけでなく、問題解決の最善策を国民のために探るべきだ。責任は与野党ともにある。年金問題は本来、超党派で取り組むべき問題である。」 ( 5/30付 ) と述べている。読売新聞社説も「年金記録漏れは、国民にとって切実な問題だ。だが、選挙の争点になじむだろうか。国民が抱いている年金不安を和らげていくため、自民、民主の両党が一致して問題解決に取り組むことが、政治の責任であろう。」 ( 5/31付 ) と苦言を呈している。けだし至言である。

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