政治の焦点

政治の焦点(第39話)

2007参議院選挙は「憲法改正問題」が争点だ。

今年の参議院選挙を迎えるにあたって、自民・民主の2大政党の対決が注目されているが、はたしてそうだろうか。私は、第3党の公明党こそが大いに存在感を発揮し、躍進する可能性があると思う。その理由を「憲法改正問題」を通して述べてみたい。

 今国会では先ごろ国民投票法が成立したが、これは単なる憲法改正の手続きを定めたもので実はほとんど問題点はないと考えている。むしろ、今後「憲法改正」の中身が大きな争点になる可能性がある。安倍総理も争点にしたいと言っている。

 すでに自民党は 2005 年に「新憲法草案」を提出しており、民主党も同年に「憲法提言」を出している。しかし最大の問題は、両党とも「集団的自衛権の行使や集団安全保障の中での武力行使を容認する」という点にある。これはまだ余り知られていないが、憲法改正の中でも第9条を改正する重大な問題だ。

 憲法第9条には、ふたつのことが書かれている。すなわち、ひとつは1項に「戦争の放棄」、もうひとつは2項に「戦力の不保持」が明記されている。その結果、日本は「わが国を防衛するため必要最小限度の範囲内で、個別的自衛権としての武力行使が認められている」に過ぎず、「集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるものであり憲法上認められない」。また、「集団安全保障活動、すなわち、イラクなどの国連の多国籍軍に対しては、その目的・任務が武力行使を伴う場合は参加することは許されない」。

 従って現在のイラクへは、国連安全保障理事会の決議に基づき、人道復興支援を目的として自衛隊が派遣されているのであって、決して戦争をするために行っているのではない。実際自衛隊は多国籍軍の指揮下に入らず独自に活動を続けており、かつ、自衛隊の活動場所は非戦闘地域に限定されている。

 さて、自民党の新憲法草案では、憲法第9条2項「戦力の不保持」を削除し、その代わりに「第9条の2」を設ける。そこでは「自衛軍を保持する」とともに、「自衛軍は、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動を行うことができる」として、武力行使を容認しているのである。

 民主党の「憲法提言」でも、まず「制約された自衛権」を明らかにする。これは恐らく「集団的自衛権の行使を認める」ものと推定される。さらに、「国連集団安全保障活動の一環として展開されている国連多国籍軍の活動や国連平和維持活動への参加を可能にする。それらは、その活動の範囲内においては集団安全保障活動としての武力の行使を含むものである」と明記している。

 今多くの国民は、自民党や民主党がこのように憲法第9条の抜本改正に踏み切ろうとしていることを知らない。しかしこれから参議院選挙を通じて、それらが明確にされることは国民にとっては良いことだ。ただしその場合、民主党は間違いなく分裂の危機に瀕するのではないだろうか。なぜなら、現在の民主党は、いわば選挙互助会みたいなもので、第9条は絶対変えないという旧社会党の人から、軍隊をもって戦争ができる普通の国にしようという旧自民党の人まで、安全保障の考え方がバラバラであるからである。他方自民党も無傷であるはずはないだろう。場合によっては第9条の改正をめぐって、政界の大再編も起きるかもしれない。

 また、日本共産党は「憲法のすべての条項を守ります」と言っているが、これは真っ赤なウソである。現憲法を「ブルジョア憲法」と否定的に位置づけ、第9条を「ブルジョア平和主義」と軽蔑し、第9条廃止論を唱えてきた政党、それが日本共産党である。憲法を制定した1946年6月の制憲議会で、唯一現行憲法に反対した政党が日本共産党なのである。これは厳然たる歴史の事実であり、永久に消すことはできない。日本共産党は、表面上は護憲政党を装いながら、将来は現憲法を廃止して「日本共産党憲法」に取り換えるとしている党なのである。騙されてはならない。このことは改めて詳しく述べる。

 公明党は、今後の憲法改正論議の中でも、憲法第9条1項「戦争の放棄」、2項「戦力の不保持」は堅持する方針である。国民の多くは、現憲法は多少修正しても良いが、第9条だけはこのまま改正しないことを望んでいる。国民の民意を正しく反映し、真に平和を守ることができるのは実は公明党しかないことを、憲法改正論議を通じて明らかにしていきたい。

つづく。

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