政治の焦点

政治の焦点(第34話)

「障害者自立支援法」の利用者負担を軽減

公明党から自民党への強い働きかけによって、「障害者自立支援法」の利用者負担の軽減をはじめとする見直しがなされる公算が強くなった。12月1日、公明党と自民党との間で、同法の円滑な運用のための措置として、2008年度までの3年間で1,200億円の予算の確保を政府に求めることで合意した。そのうち利用者負担の軽減(2年間で240億円)については、恒久的な措置とするため07年度および08年度の当初予算に計上する予定だ。  

 同法は、昨年の衆議院選挙後に国会で可決成立したのだが、それまで無料であった福祉サービスが、障害のある方々に原則1割の負担を求めることになった。そのため、「福祉の公明党」がなぜ賛成したのか、弱者いじめの公明党はもう応援しないとの非難の声もあがっていた程だ。  

 正直に申し上げると、個人的には同法には昨年の衆議院選挙の時から疑問を感じていたので、当選した暁には国会で再考するよう強く求めるつもりであった。しかし、残念ながら私自身が衆院選に敗れたためにこれは実現しなかった。それでも国民の厳しい意見があることは党中央にも伝えてきたが、衆議院で31議席に後退した公明党の力では、294議席(定数480)へと空前の大躍進をした小泉自民党の勝利の勢いを止めることはできなかった。  

 同法制定の最大の理由は、厳しい財政事情である。2003年度からスタートした支援費制度は、行政がサービスを決定するそれまでの措置制度から、障害者自らがサービスを選択し、契約によって利用する制度へと転換するものであった。支援費制度のもとでは、特に在宅サービスを中心に利用者が増え、障害者の地域生活が前進。ホームヘルプサービスの利用者はわずか1年半で1.6倍に増加した。しかし、サービスの利用拡大のスピードに予算の増加が追いつかず、制度の維持自体が極めて困難な状況に陥ったのである。たとえば、2004年度は対前年度比16.7%増の当初予算に対して、274億円の予算不足が発生。補正予算の編成や厚生労働省内の予算の流用、地方自治体の超過負担などでしのいだが、このような財政不安を抱えたままでは、事業を安定的に実施することができない。

 二番目の理由は、精神障害者の福祉施策を大きく前進させる必要があったことである。障害者福祉施策は身体・知的・精神の3障害で縦割りに発展してきた経緯があり、現行の制度体系はバラバラで、特に精神障害者は支援費制度の対象からも外れているため、施策が大幅に遅れていたのだ。

 三番目の理由は、現行制度のままでは、障害者福祉サービスの地域間格差が著しいことである。人口に占めるホームヘルプサービスの利用者数の割合で見ると、都道府県の間で6.3倍の格差が存在。入所施設の入所者数の割合も都道府県の間で4 .1倍もの開きがある。こうした不公平を是正し、全国どこでも必要なサービスを公平に利用できる体制を構築することが求められていた。  

 これらに加えて、現状のままでは新たにサービスの利用を希望する人が、財政難から利用が困難になる恐れがあるため、日本身体障害者団体連合会や全日本手をつなぐ育成会、全国精神障害者家族連合会など、障害者5団体が国会での早期成立を求めていたことも背景にあった。

 しかし、公明党としては決して単純に賛成した訳では決してない。障害者は収入を得る機会が少なく、低所得者が多数を占めることから、サービスの利用が後退しないよう、きめ細かな配慮が必要であると主張。その結果、公明党の要求に従って、さまざまな減免措置が取り入れられることになった。

 本年4月の施行後も、全国各地での実態調査や障害者団体からの要望に基づき、同法を円滑に運用するための必要な見直しに全力を挙げてきた。8月14日には、利用者負担の軽減と施設運営の安定化のための具体策を厚生労働省へ要望。10月の全面施行を前に、障害児を育てる若い世帯の負担軽減が実現したほか、小規模な障害者施設が安定して運営できるように配慮がなされた。さらに、安部政権発足時の自民党との政権合意(9月25日)に「自立支援法を円滑に運用するための措置を講ずる」と明記し、その後も自民党との粘り強い交渉を続けた結果、今回の合意に至ったのである。 

 先日ライブドア社が、障害者が在宅のままIT企業で働ける仕組みを提案したことがテレビで放映されていた。公明党としてはこのように企業や官公庁での障害者雇用を促進するとともに、授産施設で働く障害者の工賃倍増計画にも取り組んでいく方針である。また地方自治体でも、公明党議員の努力で、独自の負担軽減措置やサービスが展開されている。国・地方とも厳しい財政状況ではあるが、公明党は「福祉の党」として障害者福祉施策のさらなる充実に取り組んでいく決意だ。

以 上


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