【2012/5/12公明新聞】消費増税 国民に問え=衆院本会議=

野田総理に質問する竹内氏=11日 衆院本会議

【写真】野田総理に質問する竹内氏=11日 衆院本会議

 社会保障と税の一体改革関連法案のうち、消費増税法案が11日の衆院本会議で審議入り、法案の趣旨説明に続く質疑では公明党の竹内譲氏が質問した。

 竹内氏は民主党が2009年衆院選マニフェスト(政権公約)で消費増税を掲げていなかったにもかかわらず、増税に躍起になっている野田政権の姿勢を厳しく批判した。

 社会保障と税の一体改革に関しては、日本の高齢社会を見据え「避けて通れない最重要課題で、否定するものではない」とした上で、「国民生活に直結する増税という重大な意思決定が国民の負託を受けずに実行されようとしている。ひどい暴挙だ」と指摘。その上で「ただちに解散総選挙を断行し、民主党政権に対する審判を受けるとともに、消費増税の可否を国民に問うのが筋」として「国民軽視の、民主主義を否定するやり方で(消費増税法案の成立に)政治生命を懸けると言っても、説得力を持つはずがない」と批判した。

 さらに、公明党が消費増税の前提としてきた(1)社会保障制度の全体像を示す(2)景気回復(3)行政改革の徹底―などの5条件に言及。政府が社会保障制度の全体像を示さないため、「増税法案の審議に入る大前提が整っていない」と主張した。

 また、実現性が乏しい民主党の年金抜本改革や高齢者医療制度の見直しは「ただちに撤回すべきだ」と強調。野田政権が掲げる社会保障制度の充実は、自公政権が推進してきた政策とほとんど同じで、「(当時)民主党が選挙目当てに反対した内容まで含まれている。なぜ民主党は主張を変えたのか」と迫った。

 一方、竹内氏はデフレ(物価の下落が続く状態)が長引き、欧州債務危機が再燃しかねない経済情勢に言及。欧州債務危機の再燃による世界経済の異変が起きた場合や、法案に明記した「名目3%、実質2%」の経済成長ができなくても、消費増税を断行するのかただした。

 答弁した野田佳彦首相は、法案に明記した成長率の実現は「消費税率引き上げの前提条件と規定しているものではない」と述べた。

 行政改革に関して竹内氏は、民主党がムダ削減などにより4年間で16.8兆円の財源を生み出すとマニフェストに明記したことを挙げ、「こうした公約はどうなったのか」として、天下り法人への支出削減などの取り組みを追及した。

 野田首相は「マニフェスト作成時に(政策の)検討・検証が不十分な部分があったことを率直に認め、反省しなければならない」と民主党の失政を認めた。

 消費税には低所得者ほど負担感が重くなる「逆進性」の問題があることについて竹内氏は、低所得者対策を講じることは当然であるにもかかわらず、「政府・民主党から具体的な制度設計が示されていない」とし、減税と給付を組み合わせた「給付つき税額控除」や「簡素な給付措置」のあいまいさを糾弾した。


 【竹内氏の本会議質問(要旨)】
「4年間は消費税は上げない」として、民主党が政権を奪取して2年半余り。民主党3人目の野田佳彦首相が「消費増税に政治生命を懸ける」事態を、誰が想像したか。(政権を獲得した)2009年の衆院選挙で民主党も首相も、なぜ消費増税の必要性を訴えなかったのか。不誠実ではないか。ここに国民が根本的な不信を抱いている。


 ■選挙公約破り
先の衆院選の際、野田首相自身が街頭演説で有権者にどう語ったか。「マニフェスト、書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらない」「書いてないことを平気でやる。これっておかしいと思いませんか!」。首相の発言だ。

 消費増税は09年マニフェストのどこに書いてあるのか。インデックス(民主党政策集)にも消費税は「現行の税率5%を維持」とある。「書いてないことを平気でやる」。首相自身のことではないか。「これっておかしいと思いませんか!」。全部ブーメランのように(首相に)返ってくる。

 社会保障と税の一体改革は、日本の高齢社会を見据えれば避けて通れない最重要課題であり、否定するものではない。

 しかし、わが国は民主主義の国家だ。選挙で「やらない」といったことを「やる」。公約破りにとどまらず、生活に直結する「増税」という極めて重大な意思決定が、国民の負託を受けずに実行されようとしている。あまりにもひどい暴挙だ。先の衆院選公約と消費増税法案は矛盾している。直ちに解散総選挙を断行し、民主党政権に対する審判を受け、あらためて消費増税の可否を国民に問うのが筋だ。


 ■社会保障の全体像
公明党は国民に負担をお願いするには、五つの条件が必要だと一貫して訴えてきた。

 第一に社会保障の全体像・具体像を示すことだ。「社会保障改革」によって、国民の暮らしがどう変化し、将来の生活がどの程度保障されるのか、具体的に提示すべきだ。社会保障と税一体改革では、消費税率の"引き上げ幅"と"時期"だけが鮮明だが、社会保障改革は「検討」のオンパレード。どこが一体改革なのか。「消費税増税は決められるが、社会保障は決められない」―これが民主党政権の実態だ。

 最低保障年金の創設を柱とする年金の抜本改革はどうするのか。消費税増税の明確さとは対照的に、具体策は一つも示されず来年に先送りだ。やる気があるのか。国民を愚弄するにも程がある。「年金抜本改革」は直ちに撤回すべきだ。

 さらに、引き上げる消費税のうち4%で「現行の社会保障制度」を守り、残りの1%で「社会保障の充実」を図るとしている。しかし、その社会保障制度の中身は、自公政権時に取り組んだ内容がほとんどだ。かつての民主党の主張は間違っていたということか。


 ■景気の回復
第二には景気・経済だ。大綱では「復興需要」と「民需主導での経済成長への移行」によって、「経済状況は好転していく」との見通しを立てている。仮に欧州の経済危機が再燃し、世界経済に異変が起きたとしても、増税スケジュールは変わらないのか。

 また法案付則第18条には、「名目3%の成長」と書かれている。この達成が引き上げの前提になるのか。素直に読めばデフレ脱却が前提になると考えるが、デフレ脱却や経済成長が見込めなかった場合でも、消費税引き上げを断行するのか。


 ■行政改革を徹底
第三に行政改革とムダ削減の徹底だ。民主党のマニフェスト通り「税金のムダづかいと天下りを根絶」して、16.8兆円もの財源を生み出せれば、そもそも消費税増税など必要なかったのではないか。

 かつて街頭演説で首相は、「シロアリを退治して天下りをなくす。そこから始めなければ消費税率を引き上げるという話はおかしい」と述べているが、「シロアリ」すなわち「天下り法人」は退治されて、天下りは根絶されたのか。消費税の前にやるべき行政改革が、いつの間にか「議員定数の削減」や「公務員総人件費の削減」だけになっている。身を切る改革を断行しているように取り繕っているだけではないか。


 ■逆進性対策
消費税には(低所得者ほど負担感が増す)逆進性が存在する。しかし政府・民主党から、その具体的な制度設計が示されていない。法案では「給付つき税額控除」などの施策を導入することは、法案の本則に盛り込まれたものの、導入時期や方策は示されていない。

 このように課題は山積している。今後さらに野田内閣の無為無策を徹底的に追及する。







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