政治の焦点

政治の焦点(第22話)

〜2004参議院選挙を終えて


本稿では公明党の公式見解ではなく、私独自の考え方を述べることにしたい。
まずはっきり申し上げて年金・イラク問題については、自民党であろうが、民主党であろうがどちらが政権を執っても政策の変更はあり得ない。課題は明白であり、その解決のための現実的な選択はほとんど答えが出ているからだ。従って、今後万一、民主党が政権の座に着いた場合、恐らく現在言っていることは変更せざるを得なくなるに違いない。
   まず年金問題。少子高齢化は進行するのであり、誰が考えても負担の増加と給付の制限は一定限度必然である。要はその程度問題と方法論の違いだけである。政府案は一定の前提を置いて負担と給付の具体的な数字を出し、税と保険料を財源とする今の方式を踏襲するとした。民主党は年金制度の一元化に固執し、国民に負担と給付の具体的な数字は示さずに、最低保障年金の財源は消費税を導入するとした。しかし、もしも民主党が政権をとった場合、これを実行することは不可能に近い。

何故なら一元化しようとすると、現在国民年金に加入している自営業者の場合、サラリーマンのように平等かつ公正・正確な所得の把握が、極めて困難であることは少し考えればすぐわかる。また、自営業者は、厚生年金における会社負担分をも自分で負担しなければならず、最低でも2倍の保険料となる。資産所得把握のためには国民総背番号制を導入する必要も出てくる。これは大変な論議になる。
消費税で最低保障年金を賄う場合、既に年金を受給しているお年寄りは保険料を払い終わっているのに、消費税という形でさらに負担を求められる。これでは二重払いであり、高齢者の納得は得られない。また消費税の水準も6%以上引き上げる必要があり、今後の医療や介護の負担も考えると20%の消費税でも足りないとの試算もある。
政治には理想論も大事だが、政治家の判断は現実的かつ冷静なものでなくてはならない。マスコミ受けを狙ったパフォーマンスはいずれ必ず失敗する。かつての野党はそれでも済んでいたが、政権を担う二大政党というのならこれではいけない。確かに小泉総理をはじめとする与党側の説明も十分ではなかった。テレビによる政治のワイドショー化もこれに拍車をかけたために、批判票が随分と民主党に流れ込んだ。しかし年金制度については、識者の間では何十年も前からこの民主党案も含めて議論してきており、結局現実的には政府案しかないという結論がでているのである。年金改革を主導した公明党こそ、真の意味で「正直な政治」を貫いているといえる。

少し付言しておく。国民年金基金制度というのがある。これは国民年金の二階建ての部分である。この制度は実は大変得になる年金制度である。これを知れば国民年金の未納率は大幅に減少するだろう。一元化が正解ではないことは明白だ。

なお、共産党が5万円の最低年金を国民の負担なしに全国民に保証するなどと、馬鹿げたことを公約していた。これは全国民に生活保護を約束するようなもので、新たな国民負担なしに実現するはずが無い。またこれを実行しようとすれば共産主義国家の経済が破綻しているように、日本が破産することは間違いない。国民はこのウソを見抜いていたのだろう。これほど国民を愚弄する話はない。


さて、イラク問題では民主党は自衛隊の撤退を要求している。しかし
@ イラク人による暫定政権ができ、多国籍軍の役割を定める安保理決議はドイツ・フランスを含め全会一致で採択されている。昨年の民主党の衆院選マニフェストでは、イラク国民による政府が樹立され、その要請で国連安保理決議がなされた場合には自衛隊活用による支援を行うとしているではないか。
A 自衛隊の任務はあくまでも人道復興支援のみである。しかも多国籍軍とは別に日本独自の指揮権まで認められている。従って自衛隊の活動はイラク復興支援法の枠内である。その意味では国会でも十分に議論は尽くしている。
B 日米同盟は安保だけの問題ではない。日米は経済体制を含めて深く重なり合っている。北朝鮮問題の解決も重要な課題だ。何の国際貢献も無しに日本の安全が保障される訳が無い。
C 米国のケリー候補率いる民主党は、「イラク駐留米軍の増員を主張し、他方でイラク支援の国際化を求める。ブッシュ政権以上に日本への期待は大きい。」(日経7/15)「6月のNATO首脳会議は、イラク軍・治安部隊の訓練をNATOが実施することで合意した。フランス、ドイツはイラク国内の訓練には反対する。が、場所がどこであれ、フランス軍がイラク軍を訓練する意味は重い。」(同)
このような情勢認識からすると、もしも今民主党が与党になった場合でも、米国との関係を断ち切ってイラクからの自衛隊撤退を実行するとは思われない。そのような国民に不安感を抱かせるような政党に、国民は政権を委ねるわけにはいかないだろう。また万一そのようなことを決断すれば、民主党は分裂するに違いない。


なお、多国籍軍への参加に際し、国会での議論無しに決めたことがけしからんという人がいる。しかし、6月にはイラクへ主権委譲されることは予定通りであり、その場合には、治安維持のために国連安保理決議がなされ、国連の多国籍軍が編成されることは当初から想定できたことである。なぜ民主党は半年もの国会の会期がありながら、年金問題に終始してこの問題を提起しなかったのか。議論しようと思えばいくらでもできたはずだ。それこそ怠慢ではないのか。
また多国籍軍というと、湾岸戦争時のそれをイメージする人が多いが、今回のイラクでは治安維持が任務であり、テロリストの脅威はあるが戦争を目的としたものではない。内容が全く異なっている。しかもあくまでも国連の多国籍軍なのである。


むしろもっと重大な問題は、従来憲法解釈で禁じられてきた集団的自衛権の行使を認めるかどうかにある。自民党はもちろん民主党の多くの政治家達が、憲法改正によって集団的自衛権を行使できるようにしたいとの強い意向を持っている。これに歯止めをかけるのが公明党の役割であり、どちらが政権を担おうとも、公明党が無ければ平和を維持できないことは明らかだ。社民党や共産党では不可能である。参議院でキャスティングボードを握る24議席を保有する公明党でなければ、日本の平和は守れないのである。集団的自衛権の行使の禁止を含む、憲法9条は変える必要はないと、公明党は考えている。

終わり

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