平成15年2月市会代表質問

 
1. 経済の再生について

 経済の停滞が深刻の度を増しています。企業倒産・リストラ・失業などが増大しており、日本経済の再生が緊急かつ最大の課題です。しかし、現在の日本はかつて経験したことのない難しい局面に入っており、従来のように減税や公共事業、また低金利政策など、単純に政府が経済をてこ入れするだけでは容易に立ち直らない時代を迎えております。
すなわち、第2次大戦後のわが国の社会体制は、官僚主導による中央集権体制のもと、いわば国の成長を支えるシステムとして構築され、わが国を世界有数の経済大国に押し上げるなど大きな役割を果たしたことは確かです。しかし、20世紀の末頃から、グローバリゼーション、情報化、高齢化、少子化など社会構造の変化が急速に進展し、その結果、従来のシステムでは、こうした新たな課題への対応が困難であることが明らかとなりました。

 そこで、日本経済低迷の構造的・世界的な要因を、現実に即して具体的に考えてみると、私は主には次のようなことが列挙できると思います。

(1)中国など、発展途上国から安くて性能の良い商品が大量に日本へ輸出されており、これが従来の日本の製造業などを圧倒していること。

(2)このような世界的な供給過剰状態の中で、日本にはモノが余っており世界的にみれば高い生活水準にあること。どうしても買わなければならないモノがたくさんあるわけではありません。

(3)少子高齢社会に入っていること。高齢者の貯蓄率が依然として高い上に、それにとどまらず老後のために貯蓄をしなくてはいけない五十代前半に団塊の世代が集中しており、これが日本全体の貯蓄率を上げ消費を下げているのです。これは高齢者になっても、将来に不安があるからだと推測されます。

(4)銀行の自己資本比率や不良債権額が世界的な評価の対象となったため、その対策や処理を促進せざるを得ず、結果として、過剰な債務を抱える多くの企業に対しては融資が抑制されて、借金返済・投資縮小・資産売却、ひいてはリストラや失業の増大をもたらしていること。

(5)80年代に日本がバブル経済で浮かれている間に、IT(情報)化をはじめとする世界的な技術革新の波に日本企業の多くが乗り遅れたこと。

(6)政府部門においては、もはや官僚主導の中央集権体制のもとでは、新時代の国民の多様な需要を探り当て、それに対して権限と財源を適切に配分していくことは不可能に近いこと。たとえば公共投資計画が硬直化していることや、道路公団などの特殊法人の運営が国民のニーズに合わなくなっており、財政投融資など国家財政の適切な運用・配分がなされておりません。

(7)さらに文明論として視ると、日本経済は規格型の製品を大量に生産してきた近代工業社会から、ひとり一人の知恵や感性などが問われる知識社会へと転換しつつあること。

(8)これらの世界的・構造的な要因の結果として、国全体の需要が低下し、これが物価下落(デフレ)を招いているのです。人々の間には、物価下落による右肩下がりの経済予想(デフレ予想)が定着しつつあります。

 しかも厄介なことにこれらの要因が、それぞれ複雑に絡み合っているために問題解決を一層複雑にしているのです。

 さて、先ほど指摘した長期不況の世界的・構造的要因やデフレの進行という新しい事態を克服するためには、次のような改革と対策が必要になってきます。すなわち、

(1)中国などの追い上げに対抗するには、技術・アイデア・芸術性の点で日本製品の高付加価値化を進めることです。既に政府においては、科学技術創造立国を掲げ、バイオ・ナノテクノロジー・環境・情報通信の四分野への重点投資を進めていますし、大学と産業界の連携や融合にも力を入れています。

(2)世界に遅れをとったIT(情報)化を挽回するために、官民あげて大容量・高速・低価格の情報基盤の整備に取り組むこと。

(3)銀行の自助努力もしくは、公的資金によって自己資本を増強し、銀行システムの健全化を図ること。これによって銀行から産業界への資金を還流させること。

(4)不良債権処理はもちろん必要ですが、同時に産業の再生にも取り組むことです。政府では新たに産業再生機構を設立してこれに重点的に取り組もうとしています。

(5)硬直化した公共事業計画の見直しや特殊法人の民営化などによって、政府部門を国民の真のニーズに的確に応えられるようなものに改革していくこと。

(6)構造改革特区に象徴されるような規制緩和に止まらず、明治以来戦後も一貫して続いてきた強固な中央集権体制を、抜本的な地方分権体制へと転換し、権限だけではなく税源の大幅な移譲を実現すること。これにより、環境や文化を大切にする地域社会の実現や少子・高齢化への対応を進めるなど、地域に即した潜在的需要を開花させ、新しい技術との出会いを通して消費や投資を生み出すことが極めて重要です。

(7)現在のデフレの理由は、世界経済の新しい波や、情報化、少子高齢化、文明の転換などに対して、日本の社会経済システムが前時代の構造のままであり、変化に対応できていないことによるものです。その結果、国民の多くが将来に対して弱気になり、お金をたんす預金などの形で現金を保蔵し、物やサービスに支出しないのです。従って抜本的には構造改革を成し遂げ、将来に対する安心感や期待感を醸成して、新しい需要を生み出すことが必要です。その上で構造改革をより円滑に成功させるためには、金融緩和策や円安誘導策、失業対策や雇用創出事業を通じて、国民の痛みを和らげることも不可欠です。
    
(質問)
(1)そこでまず市長にお尋ね致します。平成15年度の予算編成・政策・施策は今後の京都市経済の構造改革という視点からはどのような内容をもつとお考えでしょうか。お答え下さい。

(2)平成11年9月、私はこの本会議での質問で、新たな知識創造社会の到来を見据えた「21世紀京都市新産業ビジョン」の策定を提唱致しました。これを受けて、京都市ではこのたび「京都市スーパーテクノシティ構想」をまとめられましたが、この中では産学公の連携によって世界をリードする先端技術産業の育成を図る、「バイオシティ構想」「知的クラスター創成事業」「桂イノベーションパーク構想」などが既に着手されています。
私はこれらに加えて、京都市は「環境ベンチャー都市づくり」構想を掲げるべきであると考えます。公明党京都市会議員団としては、より人間らしい都市づくりを目指すため、昨年11月に「21世紀京都の人間都市づくり」を提案いたしました。その中で私どもが今回提案した産業政策が、「環境ベンチャー都市づくり」構想です。現在は存在しないが、将来は大きな需要が見込まれるものが次代の産業となります。今、先進国の各都市が、そうした産業の創出に躍起となっていますが、もともと、京都の技術力と研究開発力は世界のどの都市にも引けを取りません。それでもなお、こうした激しい競争を勝ち抜くには、他都市にない優位性を活かすことが重要です。幸い、京都議定書により、KYOTOは、環境ブランドとして世界に定着しています。そこで、こうした優位性を活用して環境産業を次代の産業として育てることが重要です。他都市では例えば、神戸市は「医療産業都市」を掲げていますし、大阪府は「生命科学産業都市構想」が実行に移されています。京都市は大学との連携で有利な地位にありますが、一部のハイテク企業だけを狙うのではなく、中小企業に至るまでの幅広い産業立地を構想してゆくべきです。この点に関して市長の御所見を承りたいと存じます。

(3)さらに、今、南部高度集積地区のまちづくりには、京都の新しい副都心として大きな期待が寄せられていますが、そのプランは必ずしも固まっているわけではありません。そこで、同地区を名実ともに次代を担う街とするため、環境負荷の極力少ないエネルギー・資源の「循環型モデル都市」を建設することを提唱するものです。
京都市ではすでに南部高度集積地区に産業支援の複合ビルを建設する計画を打ち出されておりますが、このビルは単なる業務ビルにとどまらず、「ごみゼロ」をめざす「循環型社会のモデル」となるような施設にすべきと考えます。さらに次のようなことを企画してはどうでしょうか。

 1.CDM指定運営機関の設立または誘致
 今後の環境産業の発展は京都議定書で提案された「京都メカニズム」の実施に掛かっていますが、このメカニズムの中心となるのが温室効果ガスの排出削減量を国と国との間で取引できるという「クリーン開発制度」(CDM)です。これは、CO2などの排出削減義務のある先進国が、義務のない途上国での排出削減事業に投資し、事業により生まれた排出削減枠を先進国が取得できる制度です。これによって先進国の削減目標の達成が容易になるとともに、途上国も資金や技術を得る機会が増えるメリットがあります。こうしたCDMプロジェクトをチェックし認証するのが、CDM理事会から信任されたCDM指定運営機関です。そこで、この機関を当ビルに設立または誘致することによって、同地区における環境産業集積の核とするのです。

 2.京都議定書センターの設置
 京都議定書に関する資料や関連事務を取り扱う京都議定書センターです。地球環境問題のメッカとなることを目指します。

 3.太陽光発電の推進
 当ビルで設置されるものについては、引き続き京都市として独自に助成することにより普及をはかり、最終的にはビルの電気のほとんどを太陽光発電でまかなうことを目指します。
産業支援センタービルのビジョンを含めてこれら南部高度集積地区の構想に対する御所見を承りたいと思います。

(4)緊急の課題として、京都市はすでに独自の「中小企業あんしん借換融資制度」を実行しています。また国においては今年度の補正予算で、新たに10兆円の信用保証枠が創設されました。特に重要なものは、公明党が重点要望として国に創設を求めていた「資金繰り円滑化借換保証制度」です。これは中小企業が既に利用している保証付き融資の借換を促し、毎月の返済負担を軽減するものです。また同制度では計画返済が見込まれる場合、増額保証も柔軟に受けることができます。さらに、公明党独自で提唱し、今回も改善された融資制度が、「売掛債権担保融資制度」です。これは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、売掛債権を担保として、融資額の9割に信用保証協会が保証を付ける制度ですが、このたび保証料率が1%から0.85%に引き下げられました。

 その上でより重要な問題は、企業を再生することです。政府与党の努力により、大企業の場合は産業再生機構による対応が整備された他、経営不振に陥った中小企業の事業再生のために、2003年度中には全都道府県に地元関係者の力を活用する「中小企業再生支援協議会」が設置されることになりました。京都では一昨日先行的に設置されたところです。京都市としても同協議会に対して積極的に関与し、中小企業の再生に尽力すべきであると考えますが、どのように対処するのかお答え下さい。

2.新しい市政の改革について

(質問)
(1)市民による行政評価

 さて、市会議員の場合は4年ごとに選挙により有権者の評価を受けます。また企業の場合には、絶えず消費者からの評価を受けているわけです。ところがこれまで一般の公務員の場合は、内部評価はあっても外部評価はほとんどありませんでした。このため市役所や区役所での市民に対する応対に対して苦情が多かったことも事実です。そこで、私ども公明党はまず公務員全員のネームプレート着用やフロアサービス員の配置を訴えて参りました。さらに平成14年3月の代表質問では私は「窓口サービスの市民評価制度」を提案したところ、早速アンケート調査や市民モニター制度も始まりました。おかげで市民の皆様からも随分とお役所の応対が良くなってきたとの言葉も頂いています。私は、行政の最終的な評価はやはり市民から受けるべきであると考えます。そこで、

 1.現在「政策・施策に対する評価制度」が検討中ですが、その手法は客観指標評価と市民満足度評価から成り、評価の対象は政策26項目と施策106項目となっています。しかしながら実は事務事業の中にも重要なものが含まれていることがあります。例えば「分別収集」という事務事業に対する市民評価を抜きにして、「新京都市ごみ原料・リサイクル行動計画」に対する正しい評価は可能でしょうか。市民には個別の現場での事務事業に対する評価はできても、政策や施策といった大きな観点からの評価はなかなか難しいと思われます。実は市民からの事務事業に対する苦情や評価の山の中に実は大きなヒントが隠されていることが多いのです。このままでは市民による政策・施策評価といっても表面的なものになる恐れがあります。このような点をどのようにしてカバーするのかお答えください。

 2.現在の案では「行政による自己評価と外部機関による点検」を行うとなっています。私はまず行政内部での点検が重要と考えます。担当部の自己評価に対して総合企画局・総務局・理財局などによる点検が必要です。その上で外部機関によるチェックを受けるべきです。外部機関の位置づけについては、私は議会からも行政からも独立し、厳正・中立な評価に徹するべきだと考えます。これらの点について御所見をお伺いします。

3.国際長寿モデル都市づくりから

 我が国は、今や世界有数の長寿国となり、少子化と相まって人口の高齢化が急速に進んでいます。本市においても人口の高齢化は例外ではなく、平成27年(2015年)頃には全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が25%を超えるものと予測され、4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎えることになります。
こうした社会の到来を間近に控えた今日、高齢者が健康で生きがいをもって暮らせる明るく活力のある長寿社会を築いていくことは、私たちに課せられた重要な課題です。また、万一、社会的な支援が必要な状況になっても、個人の尊厳が守られ、地域の人々の温かな気持ちと支え合いの中で、住み慣れた地域で生涯暮らし続けられるような長寿社会を築いていくことも大きな課題です。
公明党京都市会議員団では、こうした長寿社会に向けた諸課題に重点的に取り組み、新しい福祉文化の創造とヒューマニズム創造の社会構築を目指すため、昨年11月「国際長寿モデル都市構想」を提案いたしました。本日はその中から質問を致します。

 茨城県大洋村では、大学などと連携して、独自の寝たきり防止トレーニングなどを開発し、住民の健康づくりに大きな成果を挙げるとともに、医療費の抑制にも成功し、注目を集めています。この村は茨城県の東部、太平洋に面し農業が基幹産業で人口は1万1千人。高齢化比率(65歳以上の人が占める割合)は、2001年には25%を突破しています。同村では、「寝たきりゼロ作戦」を掲げ、筑波大学先端学際領域研究センターと共同で、高齢者の筋力トレーニングを中心とした運動・健康プログラムを開発し、実践しています。高齢者が寝たきりになる2大原因は、(1)転倒による骨折と、(2)脳卒中の後遺症です。このうち転倒による骨折は、筋力トレーニングが予防に大きな効果を発揮します。高齢化に伴い特に衰えやすいのが、大腰筋という筋肉で、これは脊椎(背骨)と大腿骨(太ももの骨)をつなぐ筋肉で、ひざを持ち上げたり、直立姿勢を保つのに重要な役割を果たします。この大腰筋が衰えると、歩き方がすり足になり、ちょっとした突起にもつまずいて転倒・骨折しやすくなります。大洋村ではまず転倒予防対策として、大腰筋の強化に主眼を置いた筋力強化運動を実施しました。また、寝たきりのもうひとつの要因である脳卒中の予防策として、血管の柔軟性を高めることに重点を置いたエアロビクス体操も実施しました。同プログラムのエアロビクスは、大腰筋強化のためのステップ昇降運動を取り入れているのが特徴です。
 96年から始まった同プログラムの効果は顕著で、一回一時間・週二回のトレーニングを一年間続けたグループ(平均年齢65.2歳)は、大腰筋の太さが15.2%増加し、高齢者でも無理なく筋力を強化できることが明らかになりました。一方トレーニングをしなかったグループ(平均年齢68.0歳)は、大腰筋の太さが7.8%減少していました。
村のこうした取り組みの効果は、医療費支出の面でも大きく表れています。高齢化の進行に伴い増え続けてきた医療費は、94年を境に減少傾向に転じました。住民一人当たりの医療費(入院と歯科を除く)を、90〜94年度の平均値と95〜99年度の平均値で比較すると、茨城県全体でこの間8%伸びているのに対し、村は1%に止まりました。医療費の抑制は、温泉施設やレクリエーション施設が手軽に利用できることによって、いわゆる病院のサロン化が防止できていることの効果も大きいとみられます。

(質問)
そこで京都市においても、私は具体的な施策を提案したいと思います。

(1)全市民参加の健康づくり運動の展開
 市民の健康づくりの目指すべき方向については、平成14年3月に京都市が策定した「京都市民健康づくりプラン」の中で示されています。そこで、本プランが市民の中に定着し、市民自らの意思で活発な健康づくり市民運動が展開されるよう、運動推進母体としての「市民健康づくり推進会議」に加えて、「区民健康づくり推進会議(仮称)」の設置を図り、計画的な事業展開により全市民参加による健康づくり運動を展開してはどうでしょうか。これらの実施に当たっては、大洋村のように大学や専門の医療機関などと連携し、まずモデル地区を設定してその実施効果を測定することも重要であると考えます。

(2)要介護にならないための「介護予防」
 このたび、介護保険制度が導入され、万一、要介護状態になった人に対しては一定の介護保険サービスが利用できるようになりました。しかし、私たちが目指すべきものは、可能な限り要介護状態にならないようにすることです。このため、心身機能の衰えの兆候がみられる高齢者等を中心に、健康状態や生活実態に応じて、専門家から適切なアドバイスや生活支援が受けられる「介護予防プラン」を策定・普及するとともに、市民ニーズを反映した介護予防に向けた生活支援メニューづくりを進めてはどうでしょうか。

(3)「小学校跡地を利用した高齢者のための健康増進センター」
 さらに、「健康づくり」や「介護予防」を実践に移すために、高齢化比率の高い市内中心部での「小学校跡地を利用した高齢者のための健康増進センター」の設置を検討してはどうでしょうか。大学や専門の医療機関による健診事業や健康づくり教室の他、温泉施設やレクリェーションセンターなどの施設を併置すればより効率的です。PFIなどの民間資金を導入するやり方であれば十分採算に乗る可能性があります。
これらの点についてご所見を承りたいと存じます。

4. 教育改革

(質問)
(1)教育改革の問題に移ります。公明党は教育は子どもの幸福のためにある、との信念から、偏差値優先の受験教育ではなく、全人格的な人間教育を重視し、様々な提言をして参りました。一昨年は教育の基本は国語力との考えから、公明党は国会では「子ども読書活動推進法」を提案し、共産党のみが反対する中他の政党の協力を得て成立させました。京都市ではわが党と同様の立場から、スポーツ振興にも力を入れられ多くの輝かしい結果も出しておられます。私自身もかつては甲子園をめざして白球を追って熱い汗を流してきた高校球児でありました。私は、子どもの可能性を引き出すもうひとつの道は、自然科学・理科に対する感動をもってもらうことであると考え、昨年の本会議でも理科教育振興を訴えるなど力を入れて参りました。その結果京都市では「理科好きな子ども育成事業」など、この2年間で理科教育予算が大幅に増加されたことは評価に値します。
 本年1月に私はノーベル化学賞を受賞された田中耕一さんの記念講演を聞く機会に恵まれました。その中でノーベル化学賞受賞の発見の基礎には、実は中学校や高校で習う「運動エネルギー保存の法則」や「フーコーの振り子の原理」が使われていることを知り、感動した次第です。中学生や高校生の皆さん、まず学校での勉強をしっかり理解することがノーベル賞につながっているのです。がんばってください。
 田中耕一さんの名言はテレビ等で紹介されていますが、実はマスコミで紹介されていない名言がありました。それは「自分たちの研究の最大の判定者はユーザーである」というものです。私はこのことは教育の現場でもあてはまるものだと思いました。
 教師の指導や教え方が良いか悪いかの最大の判定者は、子どもであると確信致します。昨年のもう一人のノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊先生は、「理科が好きになるか、嫌いになるかの分かれ目は、どうも12,3歳くらいのころです。その年齢期の理科の先生がまず子どもに好かれる存在でないといけない」と述べておられます。そして、「一人の理科の先生が学校に赴任した際、クラスの子どもたちにその科目がどれだけ好きか、五段階で点をつけてもらう。半年後、もう一度子どもに同じ質問をすると、先生が教えたことで、その科目を好きになった子どもの数がわかる」「そうした調査をやった結果、成績が良かった先生を賞賛するために行政は賞金を出してはどうか」とおっしゃっています。
 極めて重要な指摘です。「学校評価システム」の前に、実は「授業評価システム」が構築されなければなりません。教師は人格者である限り尊敬すべき存在です。しかし授業の上手・下手は別問題です。私はコペルニクス的転回を実践して、理科教育だけではなく全教科について、子どもによる大胆な「授業評価システム」を導入することを提案するものです。教師が自己満足から脱皮し、子どもの理解を促進するには、生徒の声に率直に耳を傾けることです。生徒へのアンケート調査や感想文を求めること、また生徒の意見を積極的に取り入れることです。これを人事考課と結びつける必要はありません。先生と生徒が一緒に授業を作ることが最も大切であると考えます。見解を求めます。