平成14年3月京都市会代表質問

平成14年3月京都市会代表質問
 公明党、上京区選出の竹内ゆずるでございます。本日は公明党京都市会議員団を代表致しまして、最初に「非常事態」に陥っている京都市財政をいかに建て直すかという観点から「財政再建と市政改革について」、次に「教育改革について」、そして最後に21世紀の産業振興ビジョンである「京都市スーパーテクノシティ構想」について質問致します。

【市政改革】

■ 行政革命

 私は財政再建のためにアメリカ、イギリス、ニュージーランド、カナダなど世界の国々がどのような手段をとってきたか、また日本各地の自治体における様々な財政再建策を調査・研究して参りました。その結果判ったことは、単に財政再建の理論やテクニックだけでは問題は解決されず、さらに"行政"そのものの"革命"とも言うべき大改革が求められているということでした。
1993年に発足したアメリカのクリントン政権では、行政改革運動「ナショナル・パフォーマンス・レビュー」が政策の目玉の一つとして実行されましたが、このきっかけを作ったのはデービット・オズボーンという人が著した「行政革命」という一冊の本でありました。今やアメリカで行政改革の指導者といえば、このデービッド・オズボーンをおいて右に出る者は無いといわれています。

この著書の中では概ね次のように述べられています。

 すなわち「大規模になり、集権化した官僚制度で、画一的行政サービスを提供してきた工業化時代の行政は、その時代にはマッチしていたが、今日の激変している情報社会、知識経済の時代では、もはや効率的かつ効果的に対処できない」。「官僚自体は有能で、責任感も強く、献身的でさえあるが、制度が官僚の創造性や活力を阻害してしまっている」。「この息詰まる閉塞状況を打破する処方箋は何か」。その「代表的コンセプトは、"船の櫓を漕ぐ行政"から、"舵を取る行政"に転換すること」である。「行政(government)という言葉は"舵取り"という意味のギリシャ語に起源がある」。「そして舵を取るためには"起業家精神に富む官僚"に創造性を発揮する機会を与え、従来の発想にとらわれずに、自由市場の原理を最大限活用しながら、櫓を漕ぐことを委任する」ことである。この場合の「"起業家精神に富む官僚"とは、リスクを冒す人間のことではなく、チャンスを見つけ出す人間なのである」。さらに「組織面では、"階層的な組織"から"フラットな組織"にして第一線の人々に権限を委譲し、成果に基づく業績評価制度を導入し、業績を向上させた人々にはそれに見合った報償を与える」ことが重要である。

(質問1)

 私は、この指摘は日本とアメリカの文化の違いはあるものの、現代の官僚制度の本質的課題を突いていると思います。京都市のニュー・パブリック・マネジメント、NPM理論に基づく「行政経営システム」という改革理念も、まさにこのアメリカの「行政革命」に強く影響を受けています。京都市では、"市民志向"、"成果志向"という言葉で表現していますが、その心は、「官僚的なシステムを起業家精神あふれるシステムに変えること、すなわち外圧を受けなくとも、自律的に絶え間なく革新し、品質の改善に継続して取り組む公共組織とシステムをつくること」ではないでしょうか。私は京都市の危機的な財政を再建させると同時に、抜本的な市政改革を成し遂げるためには、官僚組織にこの"起業家精神"という遺伝子、DNAを注入することが眼目となると考えますが、市長のご所見を御伺い致します。

■ 財政再建の筋道

  このような"起業家精神"という行政改革の理念を前提とした上で、財政再建を成し遂げていくための方策について、具体的に考えてみたいと思います。私は財政再建の筋道は次のような三段階があると考えています。
 すなわち第一段階として、たとえば給与カット、定員削減措置や公共投資の削減、外郭団体の整理などの「減量経営」を実行することです。短期的にはこの「減量経営」の徹底しか手段はありません。第二段階は、行政評価システムによって「事務事業の選別」を効果的に行う段階です。これによって、民間委託の導入や公共投資・公共サービスの選別化などが行われます。そして第三段階は、自治体の「運営方式の改革」という、まさに自治体経営の構造改革の段階です。財政再建は短期的な財源操作ではなく、長期的に安定させるシステムへの改革を実行すべきなのです。これには、たとえば人事・給与体系の改革や公共投資における費用対効果分析、またさまざまなレベルでの市民団体の参加などがあります。

■ 平成14年度予算の枠組みについて

(質問2)

 そこでまず平成14年度予算編成の枠組みについて質問致します。昨年9月の時点で580億円もの巨額の財源不足が予測されました。この財源不足に対して、今回の予算編成では、マイナスシーリングなど市政改革の推進によって289億円を確保、また緊急対策として職員給与カット35億円、新規施設建設の休止55億円、財政健全化債103億円や市庁舎整備基金からの借入金62億円等によって計283億円の財源対策を予定されています。財政当局のご苦労はよく理解できるものの、しかし今回の予算編成はやはり短期的な財源のやり繰りの感がぬぐえません。当面の対応としては止むを得ないものであるとしても、財源不足の本質的原因を明らかにして、構造的な対策を練る必要があります。
 財政悪化の原因については様々な分析から、私は次のように考えています。すなわち、第一に現在の財政構造悪化の原因は、これまでバブル期以前から人員を多く抱えすぎたこと。一般会計予算に占める給与費の割合が未だに20%を超えるというのは高すぎること。第二には、少子高齢化社会の到来により福祉関係予算の割合が大幅に増加していること。第三に公共事業については他都市と比べれば少ないけれども、本来もっと早く完成しておくべきであった道路や地下鉄事業などが遅れていること。第四に中国の台頭やIT化の進展など世界的な経済構造の変化です。京都市としては財政悪化の構造的原因についてどのように考えているのか見解を求めます。

■ 財政再建プログラムについて

(質問3)

 次に私は、財政非常事態から脱却するためには短期の対策だけではなく、中期3〜5年程度の「財政再建プログラム」を立案すべきであると考えます。東京都の場合は、平成12年度から15年度までの4か年計画であり、経常収支比率を当面90%以下に引き下げることを目標としています。そして内部努力、施策の見直し、歳入確保、税財政制度の改善などの項目に従い、具体策ごとに目標財源を明確にしています。大阪府や京都府、また神戸市でも同様の財政再建計画を持っています。
 ところが、わが京都市の場合はこれだけの非常時にもかかわらず、財政再建計画が存在しません。もちろん「国の構造改革や地方財政計画の見直し、景気の先行きが不透明であり、試算の前提となる指標を見出しがたいので、再建計画の立案は困難」との反論も予想されます。しかしなぜ他の自治体ができることを京都市ができないのか。財政悪化の原因が構造的原因によるものであれば、当然その対策も中期的展望にたって財政構造改革を推進していかなければなりません。また当面の非常事態を乗り切っていくだけの綱渡り的行政経営では、危険であり市民の信頼も得られません。やはりあるべき目標値に対して進んでいくべきであり、予測し難い事情変更があればその都度見直していけば良いと思います。見解を求めます。

■ 京都市の市政改革の評価

  京都市では、すでに「京都新世紀市政改革大綱」において行財政全般にわたる構造改革が必要との認識が示され、それを実現するために多くの取り組みが始まっています。そこで市政改革大綱の中から特に重要と思われるいくつかの論点について所見を伺います。

■ 京都市版行政評価システムについて

(質問4)

@
 「京都市行政評価システム」の構築は今回の市政改革の目玉であり、「市民と行政の役割分担評価」や「形態別事務事業評価」など優れた点を有していますが、本質的に「事後の評価」であり、「事前の評価システム」にはなっていません。最も大切な評価手法は「事前の評価」です。このことは政策・施策・事務事業いずれの段階の評価においても言えることです。国や他府県においても「事前の評価」を取り入れようとしているところであり、京都市も対応が必要です。
 特に公共投資については、行政評価システムの導入によって、「事前・事後」の事業評価を厳密にする必要があります。今後は施設・投資事業は、「事前」に費用対効果分析・経営アセスメントなどをしっかり行う必要があり、早急に検討が必要です。なぜならばこの判断を誤ると財政破綻を招くからです。また実施後もその効果測定を追跡することが大切です。

A
  次に京都市基本計画に対する「政策評価」「施策評価」は誰が、いつから、どのように行うのか。特に「政策」については、基本計画の中でも、「必要性や効率性、事業効果等の観点も含めた点検を行うため、市民も参加する委員会を?設置する。この点検の結果を踏まえ、必要に応じて都市計画決定事業をはじめ既に計画決定された事業等についても見直しを行う」とあります。そうであればこの委員会は早く立ち上げる必要があります。なぜならば、「政策」の良し悪しが、その後の施策や事務事業の壮大な無駄を生むかどうかの分かれ目になるからです。

B
  京都市基本計画を最初の5年間に実行に移す「京都21推進プラン」に掲げた203項目の施策については、大幅な財源不足では同プランの優先順位や年次計画の一部変更も必至であると考えますが、いかがですか。

C
  現在「事務事業の見直し等の具体的取組」に掲げた142の項目が実施されていますが、行政評価システムが本格稼動する平成16年度まで2年間もあります。そこでまず現在の取り組みを一刻も早く実施に移すことが大切です。また平成16年度に「大綱の見直し」が予定されていますが、財政状況の激変に鑑みて、これも前倒しする必要があるのではないでしょうか。早速にも聖域なき全面的な事務事業の見直しに取り組むべきです。三重県の場合は、北川知事のもと県が公的に関与するべき業務を六つに絞り、それに照らし合わせて、県の事務事業3300本を全面的に見直した結果、そのうち275事業は不要との結果が出たと聞いています。以上4点について見解を求めます。

■ 人事・給与体系の改革

  さて財政再建を考える場合、どうしても検討しなければならない分野は人件費の問題です。

(質問5)

 ここでは給与水準の問題について質問致します。今回財政非常事態ということで、給与の5%カットが実施されました。これは止むを得ないこととは思いますが、今後はこのような一時の減量経営から給与体系そのものの構造改革に移る必要があります。
 従来からは国家公務員との比較でラスパイレス指数が重要視されてきましたが、今後は民間企業との比較が大事です。すなわち、私が京都市の給与体系をみたところ、同一年齢同一賃金というほどではないにせよ、職階による動機付け(インセンティブ)が働きにくい給与体系であると思われます。これからは、「昇任すれば給料が上がるのでがんばろう」という体系に変えていく必要があります。さらに責任の重さや、仕事の成果が報われる人事・給与体系に変革することが求められています。すなわち今後は公務員給与表の年功序列方式を是正するとともに、職階、ポスト、実績などに対応した民間なみの職務給を形成すべきです。また、今回から55歳昇給停止を導入されましたが、今後は高齢者の給与ベースをおさえ、さらに下降カーブにするのかどうか。さらに今後の大量の退職者の発生に対応して退職金の支給月数をどうするのか。各種手当ての見直しは行うのか。何かお考えはありますか。これらの点について所見を求めます。

■ 民間活力の導入

  財政再建の第二の大きなテーマは民間活力の導入です。京都市市政改革大綱の中でも、民間活力の導入について41事業の取り組みがなされているところです。その努力については敬意を表するものですが、もう一歩抜本的な改革に踏み込めてはいないのではないでしょうか。 全国の具体例をお話したいと思います。東京都三鷹市では、廃園した市立幼稚園を市が改装し、教育出版大手のベネッセコーポレーションが運営する公設民営の保育所として開園しました。公立保育所の運営を民間企業に委託するのは全国で初めて。公営で保育園を運営した場合、経費は年1億7千万円かかるが、ベネッセは84百万円で運営します。通常保育園の経費は8割が人件費。保育園の評判も良いと聞いています。
 福岡市では昨年3月に稼動した東区のごみ処理場の一角にある「リサイクルプラザ」の運営を非営利法人組織(NPO)に委託しました。NPOへの委託は人件費削減だけではなく、市民によるごみ減量に向けた取り組みの支援につながるといわれています。
 河内長野市では小学校14校分の7800食分の調理と配送を民間企業に委託しています。直営に比べてほぼ半分のコスト。同市は新しい事業を始める場合はまず、委託の可能性を検討します。人口1万人当たりの職員数は約52人と近畿でもっとも少なくなっています。
 今後の計画で最も大規模なものは、神奈川県の事例です。同県では自治体が行っているごみ処理事業を全面的に民営化する試みが動き出します。神奈川県が企業と協力し、市町村のごみ焼却場を順次廃止し、民間が運営する施設に20〜30年計画で段階的に置き換えるのです。新施設はごみによる発電やリサイクルを最大限導入し、企業がごみを資源とした収益事業ができるようにします。これが実現すれば世界に例のない大規模な循環型社会が生まれることになります。2015年度には廃棄物の発生量は約2,400万トンの予想ですが、新しいごみ処分方式が軌道にのれば大半を再利用できるほか、処理施設の集約などで廃棄物処理コストを30〜40%削減できるなど民営化のメリットは大きいといわれています。

(質問6)

 これらの事例で明らかなように、真剣に財政再建を考えるならば、行政評価システムの構築を待つまでもなく、「将来あるべき民間委託の戦略デザイン」を描くべきです。私はやみくもに民間委託を進めよと言っているわけではありません。本来市役所内部で技術やノウハウを蓄えるべきものが何であるかを見極めることが大切なのです。この見極めを企業経営の世界では、"Make or Buy"と呼び、トヨタなどのメーカーではこの判断を極めて重視しており、経営トップ自らが時間をかけてじっくり決めています。今後は現場や総務局などの管理部門の判断は尊重しつつも、行政経営トップ自らが「あるべき民間委託の戦略デザイン」を構築しておくことが必要と思われます。その上でしっかりとした見極めを行って頂きたい。見解を求めます。

■ プロポーザル制度の導入

(質問7)

 さて、市政改革の主役はやはり京都市の職員です。庁内活性化の観点から全国の先進的な行政改革の実態調査を行ってみますと、福岡市の「プロポーザル運動」が大変参考になりました。この運動は、職員からの制度変更の提案を現場から、管理部門の判断をバイパスしていきなり全庁の「経営トップ会」にあげて検討する仕組みです。これは三段階からなり、第一段階は現場職員から制度改革の提案を「プロポーザル委員会」あてに出す。この委員会のメンバーは現場の職員の中から選出し、出身部門のことを離れて全庁的な視点で改革提案を審査します。第二段階では「プロポーザル委員会」は個々の案件について、青・赤・黄の判断をします。青色はすぐに実施。赤色はすぐには実施できない。ただしその理由と再検討すべき時期を公開する。黄色は実現の方向に向けてさらに検討する。検討期間は1カ月とし、そこで青か赤かをはっきりさせる。第三段階では、「プロポーザル委員会」の提案はそのまま市長をヘッドとする「経営トップ会」にかけます。ここで最終決定するのです。青になれば担当課はすぐに制度の手直しを始めなければなりません。
 私は行政評価システムだけではなく、このように職員の自由な創造性が生かされ、評価される仕組みが必要だと考えます。そして新しい制度改革が認められた職員は、給与などの面で優遇されることが必要です。もちろんすでに「京都市市政研究会」などにおいて優れた提言がなされ、実行されていることも存じておりますが、一部の職員だけではなく、すべての職員の潜在的可能性を引き出していくシステム作りが求められています。福岡市の「プロポーザル運動」に負けない京都市独自の「プロポーザル制度」をぜひとも考案して頂きたいと願います。御所見を御伺いいたします。

■ 市民窓口サービスの向上

(質問8)

  "市民志向"の市政改革の成否が明確になるのは、「市民窓口サービスの向上」の取組です。これまで区役所等における窓口サービスの改善をめざして、パイロット職場の設定や、現在約4割の職場での自発的な取組がなされていることを承知しています。そのご努力には敬意を表するものですが、最終的にはその評価は市民が行うものであることも真実です。私は以前からネームプレートの着用などを訴えて参りましたが、行政評価が最優先で求められているのはこのような「市民窓口サービス」なのです。そこで私の提案ですが、市役所職員と市民からなる「市民窓口サービス評価委員会」を設置して、市役所や区役所などのサービス評価を実施してはどうでしょうか。市役所が改革に本気であることを示そうと思えば、このくらいのことをやるべきだと考えますが、見解をお伺い致します。



【教育改革】

■ 教育の目的

 次に教育改革の問題に移ります。
 私は、教育の目的は人間の幸福にあると考えています。しかし、幸福は与えられるものではありません。自らの知恵で価値を創造しながら勝ち取るものです。従って、教育の目的とは、自分自身の力で幸福の道を開いていける人間を育てることにあると言えます。このような観点から、子ども達の「理科離れの現象とその対応策」について質問致します。

■ 理科離れおよび理科教育の振興

 文部科学白書によると、日本の子どもは知識や応用力はあるが受身の態度が目立ち、理科や数学離れが著しいと指摘しています。また子どもたちの理科離れや大学生の学力低下が懸念される一方で、実は日本人の科学的教養も相当に低く、科学音痴や科学技術離れが増えている実態が数年前から取り沙汰されています。先ほどアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本など先進14カ国の一般成人を対象にした科学的理解度に関する調査結果が発表されました。この調査によると日本人の正解率は三割程度で、トップのアメリカとは倍ほどの開きがあり、日本は14カ国中下から二番目でありました。さらに科学技術上の発見や発明についての関心度チェックでは最下位という惨憺たる結果でした。
加えて社会には超常現象や超能力を信奉する空気も蔓延しており、情緒的に本物の科学を軽視する風潮が広まっているのも現実です。日本人の科学理解レベルがこのような状態であれば、子どもたちが人生を賢明に生き抜いていく知恵を獲得することが困難になると思います。

(質問9)

 そこでお尋ねします。私は理科教育のあり方を抜本的に見直す必要があると思います。今回の予算編成では、これまでの私どもの主張を反映し、「理科好きな子ども育成事業」として、「理科教育振興市民会議」を発足させ、「理科教育市民フォーラム」の実施や、実践モデル校を選んで「最新理科教育機器の導入」を図ることが組み込まれました。これは誠に喜ばしいことです。私は国の施策を待つのではなく、「理科教育振興市民会議」の討議のなかで、ぜひとも「京都市版理科教育振興計画」を策定して頂きたいと要望するものです。
アメリカでは国家的な研究プログラムを立ち上げた場合、最先端の知識を教育に振り分けるのは定番になっています。市長はアメリカ航空宇宙局(NASA)の教育プログラム「アースカム」をご存知でしょうか。これはアメリカのミドルスクールを対象としたもので、カリフォルニア大学サンディエゴ校と協力して実施されています。毎年日本からもいくつかの学校が参加し、生徒がインターネットを介して、地上4百kmを周回する国際宇宙ステーションに搭載されたデジタルカメラを遠隔操作し、地球を撮影しています。(パネルを取り出す)これが日本の高校生が撮影した「ヒマラヤ山脈上空からの写真」です。このように地球上の写真を五日間で150枚くらい撮影いたします。これらを世界各地の湖の水質汚染の検証、渡り鳥の生息環境の追跡調査や、雲の画像の天気図との比較など様々な研究に役立てています。参加した高校生たちは「宇宙から見た地球はこんなに美しい」と感動していました。また地球を愛するこころや将来NASAで働こうと決意をする生徒もいました。(パネルをおろす)
 昨年ノーベル化学賞を受賞された野依良治教授は「自然科学の研究で一番大事なことはグレートサプライズ(心からの驚き)です。新鮮で大きな驚き、これが学術研究の原点で人間の精神活動の基本なのです」とおっしゃっておられます。
 このように学ぶ楽しさや、わくわくし、好奇心が刺激される授業作りのためには、大学のまち京都の特性を生かし、大学との連携授業や最先端科学企業の研究室などの実験応援を頂くことも必要です。もちろん京都市では、青少年科学センターがありよく連携され、さまざまな工夫がなされていることも承知しております。私も昨年12月に同センターで実施された日高先生の「なぜ昆虫は飛ぶのか」のセミナーに参加し感動致しました。しかし生徒が科学センターへ行けるのは回数も限られています。
 私は今回いくつかの小中学校の視察を致しました。それぞれに工夫されている姿勢はよく理解できましたが、正直に言って学校による格差を感じざるを得ませんでした。理科実験室の器材器具の充足率は低いのではないか。小学校のときは理科好きな子どもが、なぜ中学校に入ると嫌いになる傾向があるのかなどこれからよく研究していただきたいと思います。
 また現状の小・中学校の図書館では科学辞典や図鑑などは時代遅れになっていないか。最新の科学知識にキャッチアップしているか。小中学生向けの雑誌がそろっているか等心配です。今回図書予算の充実がなされましたが、特に不足している自然科学分野についてまず補填するなど、知恵と工夫を凝らした取り組みをお願いしたい。理科教育振興のためのこれらの点についてご所見を求めます。



【産業再生】

■ 産業振興ビジョンについて

(質問10)

 最後に「21世紀の京都市産業振興ビジョン」が、このたび「京都市スーパーテクノシティ構想」として素案が発表されましたが、これに対して私も一言提案をしておきたいと存じます。世界的な経済構造の大転換期において、日本もそして京都市も極めて厳しい状況におかれています。しかしその中で光り輝く21世紀の京都を築いていくためには、新たな価値を創造していくことがもっとも求められています。京都市には日本でも稀な財産がたくさんあります。「卓越した伝統産業の厚み」、「個性豊かな大学の集積」、「1200年の歴史に裏づけされた文化・芸術」、「世界的なスケールで活躍するベンチャー企業」、そして「誇り高い市民」の存在などです。ところが残念ながらせっかくのこれらの財産がお互いに交流し、結集できる仕組みが無いために、新たな価値を創造していく力になっていないのではないでしょうか。大学の先生方は世界的な研究をしているのですが、ほとんどの市民は大学の研究者や全国から来た学生と接することはまれです。文化・芸術の分野や伝統産業・世界的なハイテク企業でも同様です。
 新構想では、これらの財産がお互いに"融合"することによって、刺激しあい、助け合い、ぶつかり合う中でエネルギーを生み出す仕組みが必要であると考えます。私はその仕掛けとして、「京都市中小企業支援ボランティア制度」の創設を提唱するものです。京都産業発展の中核はやはり中小企業であり、いま彼らが第二の創業をすることが必要なのです。ハイテクベンチャー企業などへの創業支援体制は比較的整ってきています。しかし京都の活性化のためには、いまある中小企業にがんばってもらわなければなりません。
そこで、大学の研究者や学生、様々な知恵やノウハウをもつ高齢者の方々、女性企業家、芸術家や文化人、自由業の方々などに中小企業支援のための「ボランティア」として登録してもらい、市民や中小企業経営者が新しい事業を起こそうとするときにアドバイスしてもらえる。このような"垣根の低い"仕組みが重要だと思うのです。大学の先生も象牙の塔にこもっているだけではなく、市井の中にヒントを見つけることや、社会の中で自分の研究が役に立つことを確認することも大切です。もしも仕事が現実化すれば、その段階でお互いのメリットになるようにすればよいでしょう。このような「中小企業ボランティア制度」の運営によって、市民間の「融合」を行政が行うべきだと考えます。ご所見を賜りたいと思います。