次期衆議院選挙の重要テーマについて(8)〜金融危機をいかに克服するか

「世界的な金融不安により株価が大きく下落、円高が急速に進んでいるような状況では政治空白は作るべきでない」との理由から、衆議院の解散を先送りすべきとの意見があるが、私はそうは思わない。まず、衆議院選挙に突入しても総理大臣が不在になるわけではない。次に、今回の金融不安は米国が原因であって、日本経済には金融システム上の問題はほとんどない。むしろ、11月4日には米国の新大統領が決まる。米国はおそらく大胆な金融システム改革に着手するとともに、大規模減税などの需要喚起に乗り出すであろう。これにより一進一退を繰り返しながらも、徐々に不安心理に歯止めがかかり、実体経済の回復につながってくると予想される。

 米政府は、10月14日に総合的な金融安定化策を発表した。その三本柱は、(1)不良債権の買い取りと金融機関への資本注入、(2)銀行間取引の政府保証、(3)預金保護である。直ちに米国はじめ世界各国の株価は急進した。ところが、その後なぜ再び株価の下落が進んだのか。それは、米国の主要経済指標、企業業績などの悪化が表面化したからであり、実体経済の先行きに不安を抱いたということだ。

 とすれば、米政府がとるべき政策は、大規模減税、金利低下、公共事業などの財政・金融政策の発動である。と同時に、追加の緊急市場対策が必要である。たとえば、株式を保有しないまま売り注文を出す「空売り」規制や、政府による株式の買い取り、企業の時価会計の弾力化、銀行の自己資本比率規制の見直しなどである。日本政府はすでにこれらの緊急市場対策を検討しはじめている。

 さらに大事なことは、世界の資本主義国の多くがこれらの政策を協調して実行に移すことである。11月の中旬には、米国で金融危機に関する首脳会合が開催されるが、その時に大胆な国際協調が示されることが重要かつ不可欠である。 その内容としては金融システム改革と需要拡大策が両輪となる。

 以上から明らかなように、金融不安は政権交代で解決できるような問題では全くないし何の関係もない。また、銀行と大企業を糾弾するだけの共産主義は経済音痴を通り越していると言わねばならない。政府与党は、近々緊急市場対策とともに、追加の経済対策を発表する予定であるが、少なくとも民主党はこのような非常時には大局的立場から協力すべきである。もしもこれに反対をするなら麻生総理は解散を決断すればよい。100年に1度と言われる経済有事に、つまらぬパフォーマンス優先で政権を奪おうなどという政党には、国家経済と 国民生活を守る能力と資格はない。

以 上

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