次期衆議院選挙の重要テーマについて(7)〜今、政権交代が必要か。

政権交代可能な政党が存在することは、一般的には、確かに政府与党に緊張感を与え、互いに切磋琢磨してより良い国民本位の政治を実現することになると思われる。ただし、それは野党にその能力と責任感があり、しかも、非常時ではない時に限られる。

 私は、現在の民主党が政権担当能力と責任感があるとは未だに思えない。昨年秋に小沢代表が福田総理との間で一旦合意した大連立が、民主党内の猛反対で破談になった時、小沢代表が代表を辞任すると発表して大騒動になった。党をあげての慰留の末ようやく姿を現した同氏は、記者会見で代表辞任の撤回と同時に、驚くべきことに「なぜ大連立か。いまの民主党には政権担当能力がない。政権をとっても一日ももたない。だから大連立で閣僚を経験させ、訓練する必要がある」と述べたのである。

 毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏は、「そういう民主党が、それから一年もたたないうちに急に政権担当能力を身につけた、などということはありえない。」(雑誌『潮』2008.11月号)と手厳しい。まったくそのとおりだろう。

 またこの1年間の民主党の国会対応は、何が何でも政権交代を実現しようという政局優先の党利党略が過ぎる。マニフェストについても、高速道路の無料化や子ども手当、農業者への戸別所得補償などの政策とその財源約22兆円を提言しているが、大新聞をはじめ各方面からその実現可能性が疑問視されており、私には子どもだましに見える。責任政党とはとても言えない。

 そこへ、今般の米国発の金融・経済危機が襲ってきたのである。これは米国のみならず世界中を巻き込んだ重大な信用不安に発展しつつある。G7をはじめ各国による懸命の努力がなされているものの、金融資本市場の巨大かつ構造的な問題をはらんでおり、解決にはまだまだ時間がかかると思われる。

 このような非常時に最も大事なことは政治の安定である。政治が党利党略で互いの足の引っ張り合いをしていると国家は破滅に向かう。その典型例が戦前の政友会と民政党との二大政党の激しい争いだ。「統帥権干犯問題」などを契機として、軍部に隙をつかれ暴走を許し戦争へと突き進んでしまったのである。

 「一度政権を民主党にやらせてみたら」などという単純で、甘く軽い判断で政権交代など実現した折には、日本経済は再び大混乱に陥ることになる。私たちは平成5年の細川連立政権以来、政権交代という実験の失敗は体験済みである。様々な政党が乱立と消滅を繰り返し、政治は安定せず、経済はまったくひどい状態が続いた。平成9年にはアジア発の金融恐慌が起こり、日本でも多くの銀行や証券会社が倒産したことは記憶に新しい。

 平成10年に至り自公政権が発足することによって、ようやく政治が安定し、金融危機を乗り越えることができたのである。そして小渕・小泉政権時代には巨額の不良債権処理に目途をつけ、経済が力強く回転し始めるとともに、株式市場も大きく上昇していった。

 今回の米国発の金融危機は10年前の比ではない。未熟で無責任な政党に政権を委ねてみる余裕などは無く、むしろ金融危機を乗り越えてきた経験と実績のある政党こそ政権を担うべきものと考える。もちろん自民党も官僚依存を打破しなければならない。公明党は厳しい国民生活を最もよく知る政党として、中小企業とそこで働く人々、女性・高齢者・子どもなど大衆を守るために全力を尽くす決意である。

以 上

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