京都論 

立命館宇治高校「参議院選挙マニフェスト質問会」に参加 !

このたび、立命館宇治高校から「高校生が政治や政策を深く学び、実社会を動かす政治のあり方、政党の大切さについて、主権者として成長できるようにヒヤリングの場を設けたい」との依頼がありましたので、去る6月29日、各党(自民・民主・共産)とともに公明党からは私が参加し、中学年3年から高校2年までの約100名の生徒さんの前で、質問にお答えして参りました。 ご担当の先生の熱心で優れたご指導のもと、各生徒さんからは本質的で鋭い質問がなされました。こちらも改めて勉強し直すとともに、どのように説明すれば解りやすいか研究することができ、大変有意義な時間であったと喜んでいます。ここでは当日説明が不十分であった部分も含めて掲載致します。質問等があれば是非メールでお問い合わせください。

第一部(共通スピーチ政策)

"" はじめに
テレビの政治討論では、政治家の誇大宣伝や相手を陥れる発言が多いので、注意して聞く必要があります。野党の一方的な批判やパフォーマンスを鵜呑みにするのではなく、与党側の正論もきちんと聞いて、なおかつ自分で調べ自分の頭で考えるようにして頂きたい。政党や政治家は、批判しているだけの無責任な評論家ではいけません。批判には謙虚に耳を傾けながら、国民の立場にたって政策を立案し、かつ責任をもって実行しゆく存在でなければならないと考えています。

""1. 憲法改正に賛成ですか、反対ですか ? 何を変え、何を守ると国民に訴えますか。

現憲法は、日本国民とアジアの何千万もの民衆に、多大の惨禍をもたらしたアジア・太平洋戦争の反省にもとづいて作られたものです。米国に押し付けられたという批判はありますが、これは良い押し付けであったと考えています。国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の骨格部分については、現代でも全く色あせていません。従って憲法 9 条の1項 ( 戦争放棄 ) 、2項 ( 戦力不保持 ) については変更するつもりはありません。ただし、自衛隊の存在を明記するかどうか、国際貢献活動について書き加えるかどうか、現在検討中です。また、地球環境問題の進展など制定当時予想できなかった事態に対処するため、環境権の創設については書き加える余地があります。その意味で公明党は「加憲」という概念を提唱しています。

"" 2. 格差社会は問題ですか。問題がある場合はどのように改善しますか。

いかなる社会にも格差は存在します。戦前の日本はひどい格差社会でした。戦後の経済成長によって随分と格差の小さい社会になったことは事実です。ただし、最近のある識者の分析では、先進諸国の中でも格差が相当大きい国であると指摘されています。それでも賃金格差で見る限り OECD20 カ国の中では平均以下であり、この 10 年間でも格差の拡大は小さいというデータもあります。

国としては、中程度の厚みが大きく、格差が小さい社会が良い社会だと思います。大事なことは格差が公正で合理的で納得のいくものかどうかではないでしょうか。かつ、障害者など最も弱い立場にある人でも、人間らしい暮らしができる世の中であることが大切です。そのためには、経済成長を実現すること、その付加価値の配分ができるだけ多くの国民に行きわたるような仕組みづくり、社会的弱者のための生活保護や障害者福祉などの制度の充実が必要です。

数字に表れない問題として、教育格差はあります。国立大学や立命館大学など上位私立大学へ進学する場合、小さい頃から塾通い、また私立中高一貫校への進学などが圧倒的に有利とされています。加えて大学の授業料も近年はかつてより著しく高くなっています。 ( 昔は国立大学は月千円でした ) 。医学部の場合はさらにこの傾向が顕著です。これでは経済格差が教育格差になってしまいます。しかも、世代を超えて固定化しつつあるとも言われています。

そのため私たちは塾へ行かなくても、公立の小・中・高校でしっかりとした教育を施し、大学進学が可能となるような体制を作り上げてきました。マニフェストでは、公立学校の土日の補習授業も提唱しています。また、教育費の減免制度や奨学金を相当充実させました。特に大学生の場合、無利子・有利子、月額 3 万・5万・8万・ 10 万円と多彩な種類で、 113 万人分以上の奨学金を確保しており、現在では少なくとも経済的な理由から大学進学を諦めることはなくなっています。立命館大学は立派な大学で、その昔夜学があり、昼間働きながら夜には疲れた体に鞭打って一生懸命勉学に励み、卒業後社会で偉くなった先輩たちをたくさん輩出してきました。その時代と比較すると、奨学金制度の充実によって経済的負担が随分と軽くなったといえます。今回のマニフェストでは医学部進学者のために月額 12 万円の奨学金を提案しています。

"" 3. 消費税の値上げはここ数年で必要ですか。値上げの場合、その理由と使い道は。反対の場合、財政再建は大丈夫ですか。

当面は徹底した歳出削減努力をすべきです。また景気が回復傾向にあり増収が続くので、ここ数年での引き上げは必要ありません。しかし、将来は高齢社会の到来によって医療費や福祉・介護費の増大が見込まれ、引き上げが要請される可能性があります。

財政再建については、まず、年々の一般歳出の額を税収の範囲内まで圧縮する行財政改革を断行します ( 基礎的財政収支の黒字化 ) 。その上で、名目金利を名目経済成長率の範囲内に抑えることができれば、債務残高の GDP 比は減少していく理屈となります。

確かに、政府債務残高は 880 兆円を超えていますが、政府の金融資産も約 5 百兆円以上あり、その意味では政府純債務はそれほどでもないという分析もあります。また、債務の 9 割は国内からの借り入れであり、他国からの借金がほとんどの米国などとは全く意味が異なります。財政再建を急ぐあまり、短兵急に増税をしたり極端な歳出削減を行うと、経済の腰を折りデフレを招くことがあります。

消費税については、 2004 年度に実施した与党の年金改革で消費税に頼らないことを決定したことが重要です。民主党との違いはここにあります。民主党のマニフェストでは基礎年金の財源を消費税 5% でまかなうとしていますので、結果として一般財源が不足します。そのため民主党案ではさらに消費税 5% を引上げなければならないことになります。与党の改革では消費税の引き上げ圧力は相当軽減したといえます。

 

"" 第二部 ( 個別質問 )

""4. 集団的自衛権の是非についてどう考えますか。

学者の一見もっともらしい理屈だけで政治を行ってはいけない。日本国憲法の戦争放棄や戦力の不保持の条項は、かつての悲惨極まりないアジア・太平洋戦争の体験から、二度と戦争はしたくないとの思いで日本国民が賛同したものです。その趣旨は言い換えれば「専守防衛」です。集団的自衛権の行使は、専守防衛とは矛盾します。また「集団的自衛権は保有してはいるが、行使できないというのは論理的におかしい」という人がありますが、そんなことはありません。国際法上認められている集団的自衛権であっても、わが憲法が制約を課しているということであって、決して論理矛盾ではありません。もしもこれが認められるとすると、今回のイラクへの自衛隊派遣において、給水などの人道援助にとどまらず、米軍との共同軍事行動がなされ、恐らく1千人以上の死者が出るという最悪の事態になったかもしれません。政治は結果責任です。結果を想定して判断しなければなりません。

"" 5.赤字国債はどうするのですか。大丈夫ですか。

既述のとおりですが、これは超長期にわたる非常に難しい問題です。予算構造の改革、例えば、徹底した行政評価制度、公務員総人件費の圧縮、民営化、公共事業の見直し、道路特定財源の一般財源化などを進めるとともに、道州制の導入 ( 議会と行政の合併 ) 、中国やインドなどに負けない新たな産業の創出など、国家全体の付加価値を高める改革が不可欠です。そのためには国民が真剣に学び、智恵をめぐらさなければなりません。間違っても、日銀引受で国債を発行し財政インフレを起こして問題の解決を図るような手法はとってはならないと考えます。

""6. 年金問題は1年で解決できるのでしょうか。

5千万件のコンピュータ内に残っているデータについては、1年で照合は可能と思われます。昨年8月以降同様の問い合わせが約 2 百万件ありましたが、その 98.6% はコンピュータ内の記録を精査することで解決しています。 10 年かかってできなかったものが 1 年でできるのかと言われますが、それは今までやってなかったからであって、国民からの申請を待つのではなく、やる気をもってプログラムを開発しさえすれば、ほとんどはたちどころに受給権者はみつかります。

もちろん完全解決にはさらに数年かかるでしょうが、権利のある人が馬鹿をみるようなことは絶対させません。そのための第三者委員会であり、また年金時効撤廃特例法案なのです。たとえ何十年前のものであろうと、権利が確定すれば遺族にまで年金は支給するので心配は要りません。

""7. 消費税を学生も払わないといけないのはなぜですか。

入のほとんどない学生でも消費税がかけられると、所得に占める消費税の割合が大きくなるため、不公平感が生じるという質問だと思います ( 逆進性 ) 。しかし、学生は収入不相応の消費をしなければ消費税は少なくなるので、公平であるともいえます。

また、消費税は誰もが行う消費に着目して課税を行う制度であるため、水平的公平であるともいえます。所得税や資産税だけでは絶対に税金を支払わない人がいます。極端な話、泥棒屋さんでもヤクザ屋さんでも、消費税であれば支払わないといけないのです。社会全体を考えると、ある程度は消費税もなければ公平であるとはいえないでしょう。もちろん今後引上げる場合は、食料品など生活必需品への税率は再考する余地はあります。

 

以 上